美しいアクション映画『Lovers』
◆映画のデータ◆
原 題:十面埋伏
製作年:2004年
製作国:中国
監 督:チャン・イーモウ
出 演:金城武(ジン)、チャン・ツィイー(シャオメイ)
アンディ・ラウ(リウ)
この映画を観た感想を一言で言うならば「おったまげた」です。
何におったまげたかというと、この映画、一応アクション映画だと思うんですけど、アクションシーンのリアリズムよりも、その映像の美しさ・楽しさを徹底して追求していること。短剣などの武器の動きや人間の動きなど、ありえね~というシーンが多いのですが、見ててきれいだし楽しい。監督の頭の中にアクションシーンのイメージがあって、リアリズムを度外視して、あるいはそれがいい過ぎならば、リアリズムを多少犠牲にしてでも、そのイメージをイメージのままに映像化したって感じです。
ストーリーもかなりベタなストーリで、練りに練られたストーリーとは言いかねます。
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唐時代、腐敗した政府と、政府打倒に動く反政府組織。政府側の捕吏は、遊郭に盲目の踊り子として潜入していた反政府組織の頭目の娘を利用して反政府組織を一網打尽にしようとする。捕吏の一人(日本でも活躍する金城武が演じている)は反政府組織のシンパを装って娘に近づき、娘と共に反政府組織の本拠に向けての旅を始める。その旅の中で起居を共にし、政府の追っ手からお互いの身を守るうちに、二人の間に恋が芽生える。捕吏にとっては見せかけの恋のつもりだったのだが...。とまあ、こんなところでしょうか。
※詳しくはgoo映画の記事を参照。
この盲目の踊り子を演ずるチャン・ツィイーがすごい美女で、彼女の華麗なアクションシーンを見るだけでもこの映画、一見の価値ありです。
この映画の予告編が繰り返しテレビで流れたので、ご覧になった方もおられるでしょう。その中に、妖しいくらいに美しい踊り子が華麗な衣装に身をまとい、踊るようにアクションシーンを演じるシーンがあったのを覚えていますか。あの踊り子がチャン・ツィイーです。衣装の袖が信じられないくらいに長く、その長い袖が踊り子が踊るのに合わせてピーピー笛のように伸びたり縮んだりし、それが武器となって敵を倒す。その奇抜にも華麗なシーンが私の頭に強烈に焼き付いていて、それがこの映画を観たいと思った最大の動機です。実際にそのシーンを映画で見てみて、その華麗さに改めて息を呑みました。先にも書いたように、このシーンを見るだけでもこの映画を観る価値ありです。
その他アクションシーンは楽しいアイデア満載。中でも、竹の青も目に鮮やかな竹林の中での戦闘シーンが印象的でした。まっすぐ生えた竹の梢に潜んでいた多数の兵士が、敵を見つけて、いっせいに消防士のようにしゅるしゅると竹を滑り降りてきて敵を襲ったり、逃げる敵を追いかけて竹のしなりを利用して竹から竹へ飛び移ったり、竹槍で槍ぶすまを作って敵を閉じ込めたり。見ているだけでわくわくし、楽しくなります。
こうしたアクションシーンやストーリーの荒唐無稽さにもかかわらず、作品全体のリアリティは微妙に保たれています。少なくとも「馬鹿馬鹿しくて見てられない」という風にはなりません。荒唐無稽とは言え、監督の信念に基づくシーン作り、ストーリー展開、演出であること、したがって自ずからそこにある程度の節度があること、あくまでアクションの美しさ・楽しさを追求するのが目的であって奇抜さや笑いを狙いとしてはいないことなどが要因としてあげられます。加えて、素人などにはわからないイーモウ監督の演出のうまさもあるのでしょう。
そこらあたりが香港のアクション映画(カンフーものや『少林寺サッカー』など)とは一線を画しています。
とにかく、美しく楽しく、才気の感じられる映画で、一見の価値ありです。
不満があるとすれば、ストーリーそのものの面白さがやや乏しいこと、金城武とチャン・ツィイーの純愛ドラマが大仰、かつ、そこにおける二人の心理の動きが納得いかないことでしょうか。
【じっちゃんの評価:★★★】