榎木津ファン(私のような)には胸の痛くなる一編。
一種の館ものだった前作『陰摩羅鬼の瑕』に対し、今回は広域にわたる連続殺人事件を扱う。登場人物も多く、事件と事件、人と人が複雑に絡み合って錯綜し、読者(私のことですが(;^_^A)の頭を混乱させる。
しかも、作者お得意の「登場人物による独白」が多用され、それぞれが犯行をほのめかすようなことを言い、ますます読者の頭を混乱させる。京極堂シリーズの中でも今回が最も「登場人物による独白」が効果的に使われている例だろう。これが一種の叙述トリックとなって、読者が真相に気づくのを妨げる。こすっからいミステリファンほどだまされるだろう。
今回はシリーズの主役とも言える中禅寺=京極堂や榎木津が活躍する場面がかなり少ない。特に、本書の主題である連続殺人事件が榎木津を巡って起きるものであることもあって、榎木津の登場シーンは極端に少ない。加えて、あの破天荒な言動にもいつもの迫力がない。そのあたり、中禅寺、榎木津ファンには物足りないところだろう。逆にいつも陰々鬱々としている関口が元気で饒舌なのが印象的だ。
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