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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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私を離さないで(Never Let Me Go)


8/9に読み始めた
『わたしを離さないで』(原題:Never Let Me Go)の原書を約1ヶ月がかりで読み終えました。前にも書きましたが、今注目の、日本生まれで英国籍の作家(両親は確か二人とも日本人)カズオ・イシグロの最新作です。

この本の紹介をするのは難しいです。何を言ってもネタバレになりそうで。「黙って読んでみてください。凄い小説ですから。オシマイ」で済ましてしまってもいいのですが、それも芸がありません。

そこで、できるだけ、これから読む方の興をそがないように気をつけながら紹介してみましょう。何の予断もなくこの本を楽しみたいという方は“続きを読む”はクリックしないでください(※)。

※Amazonの記事やブログの書評なども読まないこと。

本格的なレビューに入る前に、一言だけ。この本は日本で言えば「純文学」ってことになるでしょうが、エンターテインメント(それもミステリの要素がたっぷりある)としても大いに楽しめます。

いつもとは違って今回は最初に“じっちゃんの評価”を出しておきましょう。

【じっちゃんの評価:★★★★】

--------------------
物語の舞台はイギリスの寄宿学校(のような施設)です。そこの生徒のKathy、Ruth、Tommyの3人を中心に描かれる生徒たちの日常は、最初のうち特に何の変哲もないように見えます(※)。

※これは私が原書で読んだからかもしれません。訳書で読んだらハナっからこれはヘンだなという記述になっているようにも思えます。

でも、そのうちちょっとヘンだなと思うような記述が徐々に表われ始めます。異常というほどではありませんが、あれれと思うような記述が。そこから読者の(私のってことですが)頭の中に疑問符が次々と湧き上がっていきます。

作者はそうした謎を謎としてではなく当たり前のことのようにぽーんと投げ出して一切の解説をしません。それも当然で、物語は登場人物のKathy自身が自分の育った過去を追想しているという形になっているからです。Kathy自身は生まれた頃からそういう環境で育っているので、何の疑問も抱いていないわけです。だから、Kathy(=作者)による積極的な謎解きはされず、読者はじらされるような形になって、謎に対する興味はいっそう高まって、先を読み急ぎたくなります。ここんとこ、とてもうまいです。

真相は徐々に徐々に現れてきます。Kathyが語り手なので、謎を明かすという形ではなく、自然に真相が見えてくるという形で。だから、読者は自ら想像をたくましくしてああなのかこうなのかと考えさせられることになります。それがまた読者を物語に引き込みます。

現れてくる真相は驚くべきものです。そして深く考えさせられます。XXとは何なのか? YYとは何なのか?...と。

主人公たちがそうした現状を淡々と受入れていているのが不思議というか、不自然な気もしますが、それがこの小説に、静謐で上品な印象に加えて奥行きを与える要因にもなっており、マイナス面よりプラス面の方が多いと言っていいでしょう。

(読者にとって)真相がかなり明らかになった後、今度は主人公たちによる真実探しが始まります。これまでは真相が自然に表れてくるという形だったのが、そこからは積極的な謎解きに変わります。その過程はとてもスリリングで、もうほとんどミステリ小説です。

その先に何が待ち受けているのか、もうハラハラ・ドキドキ・ヒヤヒヤ、私は完全に主人公の気持ちになって手に汗握って読み進めました。それまでは通勤電車の中でゆっくりゆっくり読んでいたのですが、そこからは一気呵成に読んでしまいました。

そして、主人公たちがとうとう真相にたどりついた時....。何と言ったらいいのかな。もちろん衝撃的なのはとても衝撃的ではありましたが、それ以上に深い感動が、ぶわっという感じではなく、じわじわと身体を包み込むのを感じました。ここでいう感動というのは“美談に感動”という類のものでないことはもちろんですが。

この小説は、主人公やそれをとりまく生徒たちの友情と反目、恋愛と嫉妬、希望と不安、出会いと別れなどとともに、主人公たちの成長していく姿が描きこまれ、優れた青春小説としても読めます。

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COMMENT

私の読後感

私もあまり前知識無しに、読みましたが、次第に「何だろう?」というのが解き明かされていくあたり、とても面白く読んでいって、Ruthが自分の未来像を探しにいくところとか、Tommyが必死に自分の絵を完成していくところとか、せつなくてまた美しい態度で、涙をこらえきれませんでした。最後ではっきり分かるあたりにも圧倒されて、おもわずわっと泣いて改めて凄い小説だと思いました。

読み終えて、もう2週間あたりになりますが、今でも頻繁に自分の頭にひとつひとつ情景がうかんできて、ふと考えたりしてしています。 彼等が反発しないのを不思議と思うより、無知に信じてそれを実行していくあたり、私自身の人生などを振り返ったりして、涙がまた出てくるのです。NPRのインタヴューで作家が「一度しかない人生に、自分で楽しいこと遅くならないうちにやったほうがよい」と言っているのも納得できます。

dmarcさん、はじめまして(ですよね?)

この本のレビューは結構気合を入れて書いたんですが、何の反応もなく、少々さびしく思っていました。そこへdmarcさんのコメント、大変うれしくありがたいです。

KathyやRuth、Tommyなどが自分たちの過酷な運命に対して声高に叫んだりせず、淡々と受け入れているのが、感動を深くしてますよね。

Kathyのお気に入りの音楽、なくし物が見つかる町、お人形を抱えてひとり踊るKathy、うわさの船を見に行くたびなどなど印象的なエピソードが多いのもこの作品の素晴らしいところです。

イシグロの他の本

じっちゃん、この作家の他の本、読まれましたか?私は映画の「the remians of the day」を観てから興味が出てきて、4冊くらい買ったのですが、結局読み終えたのは「Never Let Me Go」が最初でした。これから「Unconsoled」にチャレンジしようと思っているのですが、この本は、分厚いですね。 それからイシグロでも無くていいのですが、他に読まれた本でお勧め作品があったら、教えてください。

dmarcさん、いらっしゃい。

イシグロはまだこの本だけですね。

イシグロ以外で原書で読んでるのはほとんどエンターテインメント系
です。
今年読んだ中では、以下の本が面白かったですね。

Freakonomics: Steven D. Levitt
The Pillars of the Earth: Ken Follett
The case of the caretaker's cat: E.S. Gardner

このうち特におススメは"The Pillars of the Earth"です。
このブログでレビューしてますのでよろしければご覧ください。

昨年以前のものはまた今度。

色々読まれて、楽しそうですね。

じっちゃん、色々読まれて、楽しそうですね。私は、どうもとっても長くかかりますので、とても羨ましいです。さっそく近くの古本屋さんにいって"The Pillars of the Earth"を探したけれど、この作者の他の本はあったけれど、見当たりませんでした。ネットで求めることにします。

エンターテインメント系といえば、「Never Let Me Go」の前に読んだのは、ダン ブラウンの「ダヴィンチ コード」でした。結構ページターナーで、私は読後にダヴィンチの絵の謎やキリストの人生のこと等、新たに興味を持ちはじめて、図書館に行って、ダヴィンチの美術本をチェックしたり、キリスト教の歴史の本を調べたり、数学の本を探したりしていました。長いこと、読書とは離れていたので、これだけ私を再び本読みにそそのかしたりしたのは、この本に感謝しなければと思っているところです。

dmarcさん

>さっそく近くの古本屋さんにいって"The Pillars of the Earth"を探したけれど
洋書をたくさん置いている古本屋さんが近くにあるんですか! うらやましい。

>Never Let Me Go」の前に読んだのは、ダン ブラウンの「ダヴィンチ コード」でした。
実はこれ一昨年、邦訳が出る前に原書で読んだんです。その頃仕事で英語が必要だったので、勉強も兼ねて。もう面白くて、面白くて、分厚い本だったけれどすいすい読めました。・・・・といっても、1ヶ月かかりましたけど。

じっちゃん,

「ダヴィンチ コード」を英語で1ヶ月で読まれるのは、かなりの速度です。私はこの読後にちょっと考えたのは、書いてあることが殆ど事実であると読者に印象を与えて、さて、どこからが事実でどこからがfictionであるかが自分でも分からず、他の友達なんかにも訊いても分からず結局図書館にいったりしたのですが、そして、かなりの読者がそう思っているようで後で色々なこの本に関する本が出てきているのも裏ずけますが、自分で作者を恨んでいいのか感謝していいのかと迷ったものでした(ちょっと、読後に不満感があったりして)。 でもこの後「Angels and Demons」等を自分で買ったりしているのだから、結局面白く読めれば、それで良いのだと納得したものでした。  

dmarcさん、いらっしゃい。

僕はフィクションと事実の関係はあまり気にしませんでした。
『ダヴィンチコード』は小説であってノンフィクションではありませんし、
フィクションを事実であるかのように思わせるのは作者のテクニックの
ひとつですからね。その点『ダヴィンチコード』はうまくて、納得です。

>結局面白く読めれば、それで良いのだと
結局これに尽きますね。

じっちゃん、こんにちはっ♪
原書で読まれたんですね~。
この作品に限らず、作者の書いた言葉をそのまま読めるのは、
未知の世界が広がっているようで、
日本語しか読めない私には何とも羨ましい限りです(*^_^*)

>“美談に感動”という類のものでない
そうですね。ただ一言で、「感動しました」「よかったです」「おもしろかったです」で終われない、何かひたひたと、じわじわと、心に広がってくるものを感じました。

そらさん、こんばんわっ!

原書で読むのは日本語で読むのとはまた違いますね。
ところどころわからないところがあって想像で補わなきゃならないのも
また一興で(笑

>ひたひたと、じわじわと、心に広がってくるものを感じました。
ですよね!
我が意を得たりです。

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「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ

読んで何日かたっているのですが、いまだに自分の感情に近い言葉が出てきません。★★★★☆読み始めてすぐ、わたし(キャシー)がどういう立場にあるのか、大体予測がつきます。だから。キャシーは、はっきり
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