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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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注目の作家・海堂尊の『ナイチンゲールの沈黙』


『このミス!』大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』で華々しくデビューした海堂尊の受賞後第一作。

前作『チーム・バチスタ』の続編であり、舞台は同じ東城大学医学部付属病院、登場人物も不定愁訴外来担当・田口講師、厚生労働省の役人・白鳥の名コンビを初めとして、前回の主要登場人物が勢ぞろいする(前回の事件で舞台を去った人は除く)。となれば、前作がめちゃくちゃおもしろかった(★★★★!)だけに、期待は高まります。

このシリーズの面白さの要素はいろいろあるけれど、何と言っても筆頭は登場人物のキャラ。ワトソン役だがちゃんと役にも立つ田口講師、狸おやじだがいざというときには頼りになる高階病院長、老獪でこれも頼りになるベテラン看護師・藤原さん、中には敵役もいるけどどこか憎めない個性豊かな(助)教授の面々。

そして何と行っても名探偵役の厚生省役人・白鳥。これが、相当の奇人変人かつ愛すべきキャラ。奇人変人で愛すべきキャラといえば京極堂シリーズの榎木津名探偵や奥田英朗『イン・ザ・プール』他の伊良部医師がすぐに思い浮かびます。白鳥は奇人変人ぶりではさすがにあの榎木津には一歩を譲るものの、伊良部とはいい勝負。"愛すべき"という点ではひょっとしたら3人の中でも一番かも知れません。

ね、これ聞いただけでも読みたくなるでしょ?

--------------------
今回は小児病棟が舞台で、不治の病(※)にかかった子供たちとその治療にあたる医師や看護師を巡っておきる事件を描きます。
 ※とても珍しくまた患者にとって酷な病気ですが、どういう病気かは今後読まれる方のために
   伏せておきます。

舞台が舞台だけに切ない話が多く、私など涙なしには読めませんでした。しかし、それが仇になったかなという気もします。というのは、白鳥に前作ほどの傍若無人ぶりが見えないからです。切ない病気を抱えた患者やそれを看取る人々を相手にさすがに無茶なこともできなかたのでしょう。

白鳥が冴えない理由にはもうひとつあります。

今回白鳥に強力なライバルが登場します。白鳥の大学同窓にして、先進的科学捜査で警察庁の検挙率を一気に高めた名刑事・加納。白鳥に負けず劣らずの濃いキャラで、白鳥の友人というより兄弟という感じ。そのせいで他の刑事から白い目で見られたりもしています。最初はこの2人の丁々発止の戦いが見られるかと大いにワクワクしたのですが、結局じゃれ合い程度に終始し、鋭い推理合戦のようなものはありませんでした。逆に、加納の存在によって白鳥が自由奔放に活躍できなくなっている面すらあります。何のために加納を登場させたのか作者の意図にいささか疑問を感じます。加納がいいキャラだけにもったいないです。

前作では、白鳥・田口のコンビによる心理学を応用した関係者の聞き取り調査が斬新で、かつ大いに楽しめました。今回もそれを楽しみにしていた読者は多いはずです。実際、それはあることはあるのですが、前作より量・質ともに劣り、全体として不発に終わっています。他のアイデアをたくさん盛り込んだせいでこちらの方が疎かになったのだと思うのですが、期待していた当方としてはとても残念でした。

ミステリとしても、トリック、捜査のプロセス、結論を導き出すロジック、結末の意外性のいずれをとってもいささか弱く、物足りなさを感じます。トリックにも、捜査のプロセスにも、解決方法にも斬新なアイデアが盛り込まれているにもかかわらず、それらが生かしきれていないのが残念です。

今解決方法が斬新といいましたが、その斬新さは京極堂シリーズの榎木津の方法に匹敵すると言ってもいいでしょう。しかし、榎木津の場合、あの語り口・雰囲気の中で使われるからすんなりと受け入れられ楽しめるのであって、この作品のようにリアリズムをベースとする作品の中であのファンタスティックとも言える方法を使うのは無理があるように思います。

今回の作品は白鳥・田口シリーズ(仮称)の2作目にあたる作品です。すなわち、起承転結の「承」にあたります。今回は前作を"承けて"枠組みは大きく変えず、少しだけ物語を発展させる程度にとどめた方がよかったのではないでしょうか。二作目にしてさまざまな新アイテムをこれでもかと投入した作者の意気込みと冒険心には敬意を表しますが、それらが消化不良に終わった結果を見ると、そう思えてなりません。

【じっちゃんの評価:それでも★★★(作者の冒険に敬意を表して)】

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COMMENT

こんにちは。
F2ブログランキングおめでとうございます。
じっちゃんさんのところは時々覗かせてもらっていましたので
なんだか嬉しいです。
この本面白そうですね~。ちょっと読んでみたくなりました。

homyさん、ようこそお越しくださいました。
(『罪と罰』関係の方ですね(^^))

>F2ブログランキングおめでとうございます。
>じっちゃんさんのところは時々覗かせてもらっていましたので
>なんだか嬉しいです。
ありがとうございます。そう言っていただけると感激です。

>この本面白そうですね~。ちょっと読んでみたくなりました。
前作『チーム・バチスタの栄光』を読まれていないのであれば、
そちらをまずどうぞ。

こんにちは^^

前作から注目はしてるのですが
両作ともまだ読んではないのです。
とりあえずじっちゃんさんの評価が高い前作から
時間と金に余裕ができたら購入したいと思います^^

私も「ナイチンゲールの沈黙」読みました。
じっちゃんサマほど正確に読みこなせなかったのですが(汗)、
私も白鳥さんにもっと活躍して欲しいなと思ってしまいました。

同じ作品でも他の方が書かれた感想を拝見するのは、勉強になりますね。
私も、もちっとしっかりアタマを使わなくっちゃ、です(^-^)
もし宜しければTBさせていただけると嬉しいですが・・・。

v-34シンさん、ようこそ。
>時間と金に余裕ができたら購入したいと思います
そんなことおっしゃらずにすぐにでも。

v-34陽菜さん、いらっしゃい。
>じっちゃんサマほど正確に読みこなせなかったのですが
そんなあ。今読ませていただきましたが、すばらしいレビューでした。

>同じ作品でも他の方が書かれた感想を拝見するのは、勉強になりますね。
同感です。

>もし宜しければTBさせていただけると嬉しいですが・・・。
そりゃ、歓迎。私もトラバさせていただきます。
(って、なぜかうまく行かないことが多いんですよね)

ありがとうございました!

拙ブログへのご訪問、TB,ありがとうございました~(^-^)

私、あの濃いキャラの白鳥サンのファンなので、
じっちゃんサマのおっしゃってる「白鳥が冴えない」のに激しく同感です。
ゼヒ次回作?(笑)は、あのオリジナルの2人で突き通して欲しいですよね。

最近は少年マンガばっかり読んでて(汗)、思考力の低下を実感しています(^-^;)
またこちらにお邪魔して、勉強させていただきますね。
ありがとうございました♪


>拙ブログへのご訪問、TB,ありがとうございました~
こちらこそ、コメント&TBごっちゃんです。

>ゼヒ次回作?(笑)は、あのオリジナルの2人で突き通して欲しいですよね。
まったく。

>またこちらにお邪魔して、勉強させていただきますね。
ぜひぜひ。

すごいですね

書評すごいですね
ズバリです。
本当に今回の作は残念でしたが、書評をみて、その理由が明確になりました!

mitsuonさん、はじめまして(ですよね?)

>書評すごいですね
>ズバリです。
それほどでも~。
照れるなあ(〃⌒ー⌒〃)∫゛ カァー

>本当に今回の作は残念でした
mitsuonさんも同じ感想をもたれたんですね。
でも実力はある作家さんなので次回作に期待したいです。

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シリーズ化への狼煙 「ナイチンゲールの沈黙」

ナイチンゲールの沈黙「このミステリーがすごい!」大賞受賞の「チーム・バチスタの栄光」の続編です。(以前書いた「チーム・バチスタの栄光」の感想はここら辺です)結論から言えば前作が95点の満足度
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