プロフィール

じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
管理者ページ

カテゴリ

openclose

お気に入りブログ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

時間ものの新機軸『削除ボーイズ0326』


「時間ものにまだこんなすごい奥の手があったなんて・・・・・・」。帯に書かれた大森望さんのコメントです。時間ものが好きな私はまんまとこの惹句にひっかかって、見かけた書店で即購入しました。普段は家に帰ってからネットで注文するので、書店で即購入というのは珍しいです。

時間ものといえば、時間旅行(タイムトラベル)と大体相場が決まっています。しかし、本書はタイムトラベルものではありません。タイトルにもあるように、これまでの人生の中から消してしまいたい瞬間(正確には3分26秒。これがタイトルの謂れ)を自由に削除できる装置を手に入れた少年の運命やいかに、というスペキュレーション小説です。

栄えある第一回ポプラ社小説大賞受賞作。
 ※ポプラ社小説大賞についてはこちらをご覧になってください。
   選考者が作家や評論家ではなく編集者であること、賞金が
   2,000万円と数ある文芸賞の最高額であることなどが特徴です。

購入後私は『ナイチンゲールの沈黙』を読み終えるのを待ちかねるようにして、すぐに読み始めました。

--------------------
読み始めてすぐ「おいおい」と思いました。主人公が小学校6年生の男の子だからです。主人公が子供だからといって子供向けとは限りませんが、世間が狭い子供が主人公の場合物語がちいさくまとまってしまう恐れがあるからです。

主人公の直都はふとした事件をきっかけに過去のできごとを削除=なかったことにできる装置を手に入れます。最初は疑っていた直都ですが、実際に試してみると本当に過去を削除できて・・・・・・。

装置を入手し実際に使うまでの展開が早いのは感心ですが、こんな装置がさしたる理由もなくあっさりと手に入ってしまうのは不自然で手抜きとしかいいようがありません。また、その装置がなぜ存在するのかも一切説明がありません。ここんところ、もう少し何とかしてもらいたかったところですが、この小説では、この装置の正統的起源はどうでもよく、その装置がどのように使われ、主人公の人生のどのような影響を与えるかを描きたかったのだろうし、実際読み手もそちらの方に興味があるだろうので、渋々ながら目をつむります。

しかし、読み進むにつれ、小学生が主人公であることに起因する冒頭の不安が、残念ながら現実のものになりそうな気配が漂ってきます。高校生との喧嘩、せこい兄妹喧嘩、肝試し、子供同士の勢力争い、担任とのいがみ合い、夏休みの自由研究、小さな恋、マラソン大会etc.etc.といった小学生アイテムが立て続けに綴られていささかうんざりします。

しかも、主人公・直都がこまっしゃくれた、やけに自信たっぷりな可愛げのない小学生なのもうんざりに輪をかけます。だって、好きな女の子にケータイで電話して、いきなり「校内マラソンで一位になるから、もし本当に一位になれたら、今度デートしてよ」とのたまわって、相手の返事もまたずに電話を切ってしまうんですぜ。その間照れやためらいに関する描写一切なし。こんな小学生います? これだけでなく、その他にも、自信たっぷりで悩みとかためらいとか謙虚さとかが感じられない行動が多く、主人公への感情移入を妨げます。

なにより決定的なのは、これから読まれる方の興味を殺ぐ恐れがあるので詳しくは書きませんが、削除されるできごとが小学生らしい"やっぱり"なできごとばかりで、「不安は現実のものになったか」とため息が出ます。

しかし (い~ですね、ここでこの接続詞が出てくるのは)、中盤である大きな予想もしない事件が発生し、そこから物語は疾走し始めます。思いがけない展開に、それまでの不安は(完全にではないものの)吹き飛び、スピーディでスリリングな展開にページを繰る手が止まらなくなります。そこから結末までは一気呵成です。

残念なのは、終盤少し物語がもたついて失速気味になること。途中で起きた大事件や、そもそも削除装置についての決着の仕方も中途半端。もう少しきっちりと落とし前をつけて欲しかった。

でも、時間ものに新しいアイデアを盛り込んでここまでエンターテインメントに仕上げた若い(25ないしは26歳)才能にここはエールを送りましょう。

【じっちゃんの評価:★★★】

蛇の足
①中に出てくる子供たちの遊び「チームかくれんぼ」(命名は私)はいいアイデア。こういうかくれんぼの遊び方をした人って実際にいるのかなあ。いるんでしょうね。
②私は今日から東北は杜の都仙台へ出張です。といっても日帰りですけどね(;^_^A  明日も別のところへ出張というハードスケジュールなので、明日は更新できないかも。

スポンサーサイト

COMMENT

時間を削除できる装置ですか。いろいろ矛盾を引き起こしそうなかんじがぷんぷんと・・・
でも、その装置が手に入ったら消したい過去はいっぱいありますね(笑)

おじゃまします。

僅かな過去でも削除したら、現在の自分じゃなくなるから・・・
そう考えると怖いです。
消しすぎると、どれが自分だったか分んなくなっちゃいそうですよ。
色んな事を含めて今の自分だし、
消すために思い出さなきゃいけないなんて、なんだかめんどくさそう^^
やるといっても、そんな装置はいらですわい!
・・・って本から外れちゃいました。
この本の作者は若いのにややっこしい時間物に手を出すとは、
それだけでも敬意します。これからも頑張って欲しいですね。^ー^b

v-34 仁香さん
>いろいろ矛盾を引き起こしそうなかんじがぷんぷんと・・・
す、鋭い! 仁香さん、ひょっとして時間ものSFを読みつけてる?
>消したい過去はいっぱいありますね
私も消したい過去はたくさんあります。
でも、消すよりやり直したいかも。

v-34 たまの猫さん
>消しすぎると、どれが自分だったか分んなくなっちゃいそうですよ。
これも鋭い! たまの猫さんも時間ものの達人か!? それとも人生の達人?

>消すために思い出さなきゃいけないなんて、なんだかめんどくさそう
これも鋭かったりして。もう、じっちゃん、たじたじです。

削除装置、私も欲しいです・・・ 消したい事なんて山のようにあります。 
運動会の踊りで1人だけ逆方向に行っちゃったとか、思い出すと恥ずかしさで 布団の中でダッシュしてしまうことばかりです。

ところで、私、大人になりきれてない大人というか、コドモと同レベルなので、クソ生意気な小学生や、ルール違反を注意されて逆ギレするコドモ(小学生以上)が大嫌いでございます。

読んだら、まず主人公に 『このガキーっ』 っとなりそうなので、ココロが
広くなったらチャレンジしてみます

ひさきゅ~さん
お友達です~。恥多き人生の。

「クソ生意気な小学生」がお嫌いだとすると、この小説の主人公には
ムカつくかも。

>ココロが広くなったらチャレンジしてみます
その方が賢明かと。

ウチのブログの方にコメントどうもです。
そうですねえ、この作品には色々な意見があるようですけど、
私自身は素直にもの凄く楽しめました。今のところネット上では
主人公達の言動や行動が小学生らしくないとか、そういった大人の
視点からの意見が圧倒的に多いようですけど、個人的にはこれを
読んだ子供達の感想をもっとたくさん聞いてみたいところですね。

まあ実際こういった小学生はいますよ。小学六年生の12歳という
思春期に差し掛かる頃の成長期の子供ってのは個人差が大きいし
全部が全部こういう感じではないだろうけど、作者はここ近年急速に
変わりつつある子供達を取り巻く現代の生活習慣を、かなり正確に
現実に近い形で上手くストーリーや舞台設定に取り入れてると思います。
まあ今はインターネットという情報を効率良く得る術があるというのも
大きいんでしょう。次回作も大いに期待できる新人さんだと思いました。

しまデジさん、お越しいただきありがとうございます。

>主人公達の言動や行動が小学生らしくない
これは僕はまったく気になりませんでした。

>実際こういった小学生はいますよ。
そうなんでしょうかね。確かにいてもおかしくはありませんが、主人公があまりに自信たっぷりで、その自信にかげりが感じられないのが傲慢に感じられて気に入りませんでした。こういう小学生が実際にいるのだとしても、そうした小学生を主人公に据えた作者には疑問を感じます。もう少しナイーブさがあってもよかったかと。

>次回作も大いに期待できる新人さんだと思いました。
それはまったく同感です。でも今度は大人の世界を舞台にして欲しいな。

はじめまして。

「削除ボーイズ」、先週の王様のブランチで紹介されていて 面白そうだったので ただいま 図書館にリクエスト中。
なので じっちゃんさんの紹介文も最初の方だけに留めて 読み終わってから
また読みにくるつもりです。
「時間もの」は 北村薫の三部作などをはじめ 結構好きなので 楽しみです。

ゆ~らっぷさん、はじめまして。
ブログのぞかせていただきましたが、なかなか素敵なブログですね。
これから時々寄らさせていただきます。
(私のブログ友達ののばらさんも足跡を残しておられますし)

>じっちゃんさんの紹介文も最初の方だけに留めて 
賢明です。

>「時間もの」は 北村薫の三部作などをはじめ 結構好きなので 楽しみです。
趣味合いますね~♪ 私と同じです。

はじめまして。
初カキコさせていただいた通りすがりのabraxasです。
落ち着いた雰囲気のホームページでとても素敵だな、と思いました。

削除ボーイズは僕も読みました。
じっちゃんさんのおっしゃったように、僕も小学生って設定にすこし拒絶反応を起こしてしまいました。
しかし、僕はやはりこの物語の主人公は小学生が適役だと読み進めていくうちに感じました。
自由で柔軟で善と悪が入り乱れた混沌とした発想は子どもならではのものです。そんな子どもだからこそ自由奔放にKMDを使い(ある意味濫用ですが)、その過程を描くことで強く子どもたちの個性を引きだすことができたのではないでしょうか?

僕自身の削除ボーイズの感想としては、「思い出は不可逆で、だからこそかけがいのないものだ」の一言に尽きます。
言葉にしてみると当たり前のことなのですが、この気持ちは喪ったときにしか分からない。
物語の最後で主人公はKMD自体を削除してしまいます。
そのことによって今までのハルや浮石やコタケとの思い出はなかったことになってしまう。
楽しかったことも、怖かったことも、腹がたったことも・・・。
それってすごく悲し過ぎるなと思います。
でもそこに切なさを感じ、作品に重みを持たせることができるのかもしれない。
タイムトラベル小説での華です。

長々とカキコすみませんでした。
では、また。

abraxasさん、はじめまして!

ブログのデザイン褒めていただいてありがとうございます。

>しかし、僕はやはりこの物語の主人公は小学生が
>適役だと読み進めていくうちに感じました。
『削除ボーイズ』のこの設定はこの設定で悪くはないと思います。
私も十分楽しめましたし。
でも、主人公や周りの小学生が小学生らしくないというか、
ちょっと共感できないのが残念でした。

>僕自身の削除ボーイズの感想としては、「思い出は不可逆で、
>だからこそかけがいのないものだ」の一言に尽きます。
おっしゃるとおりですね。
それに、そっかー、このあたりは小中学生あたりが主人公
でないとうまく行かないかも知れませんね。

>言葉にしてみると当たり前のことなのですが、
>この気持ちは喪ったときにしか分からない。
これも激しく同感です。

>でもそこに切なさを感じ、作品に重みを持たせることができるのかもしれない。
>タイムトラベル小説での華です。
まさしく!
私もタイムトラベルものが好きなのはその切なさの部分ですね。
北村薫さんの三部作、広瀬正さんの諸作、最高です。

>では、また。
よろしくお願いします!

EDIT COMMENT

非公開コメント

TRACKBACK


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

削除ボーイズ0326

今週のコータリンアルファ(広島のローカルラジオ番組)では、神足裕司の秋のオススメ本特集という内容だったんだけど、ここで神足さんオススメの4冊の中に「削除ボーイズ0326」という中々面白そうなのが紹介されてい
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
全記事表示リンク
検索フォーム
コメント・TBについて

コメント・トラックバックをされる場合は注意事項をご覧ください。

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。