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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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幕末の学園青春もの『藩校早春賦』

この本を読み終えたのは一昨日の帰りの通勤電車の中なのですが、わずか40ページ程度を読み通すのに非常に苦労いたしました。

というのも、乗車駅から隣におしゃべりなおばさん2人組が座ってしまい、ずっとおしゃべりし通しだったからで。同僚の悪口やら、嫁や孫の自慢話やら、聞きたくもない話ばかりだったのですが、因果なものでどうしてもその話が耳に入るのを遮断することができません。小さな声で話すのならまだしも、周囲100メートル以内にいる人にはすべて聞こえるような声高で話すものですからたまりません。しかも、身振り手振りで話すので肘がごんごんわき腹に当たるし、化粧の匂いはきついし、そのうち生姜飴を食べ始めてその甘い匂いが化粧の匂いと混じって....。もう、まったく読書に集中できませんでした。かといって、寝るにも寝れず。途中で降りてくれないかものかと祈ったのですが、私の降りる駅までずっとご一緒でした(;_;)

このような状況の中で四苦八苦しながらラストのクライマックスを読み終えたので、いささか評価に影響しているかも知れません。

舞台は東海の小藩。時代は「太平の眠りを覚ます上喜撰(蒸気船)、たった四杯で夜も眠れず」で世の中が騒然となっている幕末。時代が大きく動こうとしている中、そうした動きに冷静に対処できる有意の人材を育てようと、英明な藩主が藩校を作ることを決意するところから物語りは始まります。

ところでこの「東海の小藩」はどこがモデルでしょうか。ヒントは以下。このヒントから県名だけでなく地名(市町村)まで特定してみてください。
  ①東海地方である
  ②蜜柑が名産
  ③温暖な気候で雪は滅多に降らない(数年に一度)
  ④「ばかっつら」という方言が出てくる
  ⑤冬はからっ風が吹く
  ⑥立派な砂浜(砂丘)が有名
  ⑦中海と呼ばれる広大な湖がある
  ⑧秋葉神社という神社がある

これだけヒントがあれば答えは簡単でしょう。でも、東海地方に縁のない方は意外にわからないかな?

--------------------
①~③のヒントからわが静岡県(=じっちゃんの出身県)であることはすぐわかります。④がそれを後押しします。これは知らない人が多いでしょうからヒントとしてはいささかアンフェアですが、「ばかっつら」は静岡地方(特に西部地区)の方言で「ばかもの」というような意味です。

さらに⑤⑥が対象地域を狭めてくれます。このような特徴を持っているのは、静岡県は静岡県でも西部の遠州地方しかありません。

そして⑦で場所が特定されます。静岡には大きな湖はひとつしかありませんから。浜名湖です。となれば、小藩は現・浜松市に間違いありません。⑧の秋葉神社(※)があるのも浜松市ですし。
 ※全国に約800社もある。その総本山が浜松の秋葉神社。⇒詳しくはWikipediaの記事参照。
   にしても他に出てくる地名はほとんど架空なのに秋葉神社だけ実在する名前を使ったのは
   なぜでしょうね。

そして、わざと隠していましたが、作者宮本昌孝さんの出身地が浜松なんです(^-^ )

今回は前振りが長くなってしまいました。本題に入りましょう。

物語の主人公は下士の家の三男坊・筧新吾、15歳。剣に天稟の才はあるがいまだ開花せず、学問も人並みという平凡な少年。ただ、性格はまっすぐで直情径行、正義感の強い少年です。時代物の主人公はかくあるべきというような人物ですね。

この新吾には2人の親友がいます。ひとりは、同じく下士の家だが、新吾と違い長男坊で弟5人の面倒を見なければならない花山太郎左衛門、16歳。図体が大きく、剣はめっぽう強いが、大喰らいで単純思考。笑いをとるキャラですね。もう一人は、こちらは上士の家の当主で、本来なら下士の新吾たちと親友になることなどありえないが、ある事情からそうなった曽根仙之助、新吾と同じ15歳。色白で小太り、姉4人という女ばかりの家で育ったせいか気がやさしくて少し乙女系がかかっています。

この3人が、できたてのほやほやの藩校で巻き起こす、あるいは巻き込まれるできごとを書いた物語で、いわば幕末の学園青春ドラマ。学園青春ドラマにつきものの、主人公たちとことごとく対立するライバル(もちろん上士で、そのことを鼻にかけている)も登場しますし、多士済々な教授陣も登場します。もちろん、可愛い女の子も(※)。
 ※藩校は男子だけなので、藩校には行かないのが残念です。

全7話からなる連作長編の形をとっていて、各話は一応それぞれ完結していますが、背景にお家騒動の陰謀がちらつき、そのお家騒動が物語をつないでいます。藤沢周平の諸作を彷彿とさせますが、藤沢周平の作品がしみじみとして重厚なのに比べると、こちらはあくまで明るく軽快で、どちらかというと山手樹一郎のテイストに近いでしょうか。そこがいいという人もいれば、そこが物足りないという人もいるかもしれません。

笑いあり、淡い恋あり、対立あり、ハラハラドキドキの冒険ありで、かつその中で少年たちが成長していく様も描かれ、まさに学園ものの王道を行く作りになっています。もちろん、時代小説ですから立ち回りのシーンもふんだんにあります。その中で、主人公たち3人のキャラがかっちりと書き分けられていて、3人がそのキャラに合った活躍を見せるのが楽しめます。

不満があるとすれば、先ほども言いましたが、全体的に軽くて胸に迫るものが少ないこと、最後の藩主を巻き込んだ事件のからくりにややリアリティにかけるものがあることでしょうか。あっ、そうそう、我が静岡を舞台にしているにもかかわらず、方言が「ばかっつら」以外出てこないのもちょっと不満かな。

でも、そうした不満は大きな瑕にはなっておらず、幕末学園青春ドラマとして大いに楽しめましたので、新吾たちがさらに成長した姿を見せるという続編『夏雲あがれ』を読むのが楽しみです。

【じっちゃんの評価:★★★】

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COMMENT

あはは!

おばさんふたりの話、じっちゃんさんの筆冴えて、映像が浮かんできます。私も超苦手。休業初期、主治医が「家事もなんにもしては駄目。近所の奥さんたちとおしゃべりでも」と言われたのですが、「一番苦手」って思いました。
おばさんなので、この種の被害はじっちゃんさんよりも深刻かつ甚大です。
静岡、すぐわかりましたよー。前も言ったかな?道尾は滋賀と静岡の合作です。
この本、長期入院するだろう、中学生の甥にもってってやろうかなあ。

おむすびさん、ようこそ。

おむすびさんもおばさん的会話が苦手ですか。
>おばさんなので、この種の被害はじっちゃんさんよりも深刻かつ甚大です。
確かに。もうそういうものだと悟るしかないですね。

>静岡、すぐわかりましたよー。
おむすびさんなら、そうでしょうね。

>前も言ったかな?道尾は滋賀と静岡の合作です。
初耳のような気が。

>この本、長期入院するだろう、中学生の甥にもってってやろうかなあ。
それはいいアイデアかも。同年代ですしね、本好きなら、楽しめるでしょう。

世の中に怖いものなし、おばさんの二人連れ。
で、ございますね。
過酷な条件下での読書だったのですね(T.T)

今日、お友達から宮本さんが以前はSFファンタジーを書いてらしたことを教えられ、ビックリしました。知らなかったー。

幕末の青春学園ドラマですか(^.^)爽やかなお話なんでしょうね。
これから読む本リストにいれておこう!

>世の中に怖いものなし、おばさんの二人連れ。
>で、ございますね。
今回はたまたまおばさん連れだったですが、おじさんでも
若者でも、カップルでも家族でもおしゃべりな人たちはいます。
彼らに悪気はないんで文句はもちろん言えないんですが、
読書者としては困りますね。

>今日、お友達から宮本さんが以前はSFファンタジーを
>書いてらしたことを教えられ、ビックリしました。知らなかったー。
「失われしものタリオン」シリーズですね。
にしても、本好きのお友達がいらっしゃるんですか。いいですね~。
僕は本について語れる知り合いが周りにいなくて、
それがこのブログを始めた動機でもあるんです。

>爽やかなお話なんでしょうね。
爽やかですね。悪人もでてきますが、
じめじめ嫌らしいところはないですね。

>これから読む本リストにいれておこう!
ぜひ。

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