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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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さらば、クイーン-『チャイナ橙の謎』


エラリー・クイーン, 井上 勇 / 東京創元社 / 693円
Amazonランキング:131432位
Amazonおすすめ度:


久々にエラリー・クイーン(※)の作品を読みました。この『チャイナ橙の謎』はクイーン自身が自選ベスト3に挙げたことでも有名で、読むのが楽しみでした。
 ※言わずと知れた、本格ミステリファンが神とも仰ぐ本格ミステリの巨匠。

この作品には冒頭で実に魅力的な謎が提示されます。どんな謎か? 私が読んだ創元推理文庫版の紹介文を要約引用してみましょう。

「宝石・切手収集家として著名な出版業者を訪ねた身元不明の男が待合室で殺される。不思議なことに、被害者の着衣をはじめ、その部屋の家具など動かせるものはすべて"さかさま"にひっくり返されていた。犯人はなんの必要があってこんなことをしたのか?」

--------------------
この謎は魅力的です。「なぜ、なぜ逆さなんだ?」と探偵役エラリー(著者と同姓同名)とともに頭を悩ませること請け合いです。そして、さまざまな手がかりから論理的に導かれた解答はあっと驚くもので、かつ納得性の高いものです。本格ミステリではトリックについてハウダニット(方法は?)にばかり目が言ってホワイダニット(動機は?)が弱いものがありますが、その点本書は十分合格です。

本格ミステリに欠くことのできないもうひとつの魅力的かつ大きな謎・フーダニット(犯人は?)に関しては大きな仕掛けがあって、これも読者を驚かせてくれます。ただ、これには賛否があるのではないでしょうか。私はと言えば、首をひねるほうですね。費用対効果の点でも疑問(そこまでやる?)ですし、実現性にも大きな"?"マークがつきます。

さきほど褒めたホワイダニットについても、動機と解決方法の納得性は高いものの、これにも「そこまでやるか?」という思いがどうしてもつきまといます。

解決までの道筋が退屈なことも致命的です。探偵役エラリーの例の秘密主義があって、謎が徐々にほどけていく過程を読者は十分に楽しむことができません。それを補うだけの物語の面白さがあればいいのですが、それもさほどありません。謎が謎を呼んで深まっていくわけでもなく、あっと驚く急展開があるわけでもありません。

解決のためにエラリーがとる行動も明らかにやり過ぎで、疑問を超えて反発すら覚えました。

と言うわけで評価はこうなります。

【じっちゃんの評価:★★】

※※今回はここからが長い※※

クイーンファンからはブーイングが来そうですね。

告白してしまいますが、私は本格ミステリファンでありながら、本格ミステリの神様・クイーンの作品で心底楽しめたものがあまりありません。これは実はクイーンに限っての話ではありません。本格ファンとして恥をさらけ出すようですが、クリスティー、カー、ヴァン・ダインにクイーンを加えたミステリ黄金期の四大巨匠いずれもがそうなのです。

私が読んだ彼らの作品の中で傑作と思えるのは、ヴァン・ダインの『僧正殺人事件』、クイーンの『Yの悲劇』くらいで、それ以外は『そして誰もいなくなった』も『グリーン家』も『火刑法廷』も『エジプト十字架』も世評ほどには面白くありませんでした。今の評価方法で言えば、せいぜい★3つというところでしょうか。

なぜ彼らの作品が私にとってそれほど面白く感じられないのかは私なりの考えもあるのですが、それを事細かに書いても虚しくなるだけなのでやめておきます。

ただ、こんな風に書いているうちに、ひとつある考えが頭の中で形作られてきました。それは・・・・。ごちゃごちゃ書くよりも、いっそそれをここで宣言してしまいましょう。

「私は今後、クイーン、クリスティー、カー、ヴァン・ダインの作品は読みません」

あっ、言っちゃった。今、後ろ髪がすごい勢いで引っ張られましたよ。

でも、すっきりしました。積ン読本の中にも『中途の家』『災厄の町』『スタイルズ荘の殺人』『黒死荘殺人事件』など彼らの未読作品があるのですが、それらも処分します。

最後にけじめをつける意味でこれまでに読んだ彼らの作品(※)とその評価を以下に掲げておきます。
 ※長編のみ。リストに漏れのある可能性もあり。

◆アガサ・クリスティー
 『アクロイド殺害事件』★★★
 『三幕の悲劇』★★
 『ABC殺人事件』★★
 『そして誰もいなくなった』★★★
 『愛国殺人』★
 『白昼の悪魔』★★
 『ナイルに死す』★★

◆ヴァン・ダイン
 『ベンスン殺人事件』★
 『グリーン家殺人事件』★★★
 『僧正殺人事件』★★★★
 『カブト虫殺人事件』★

◆エラリー・クイーン
 『ローマ帽子の謎』★
 『オランダ靴の謎』★★
 『エジプト十字架の謎』★★★
 『Xの悲劇』★★
 『Yの悲劇』★★★★
 『ギリシャ棺の謎』★★★
 『チャイナ橙の謎』★★
 『シャム双子の謎』★

◆ジョン・ディクスン・カー(カーター・ディクスン)
 『三つの棺』★★★
 『火刑法廷』★★★
 『曲がった蝶番』★★
 『皇帝のかぎ煙草入れ』★★
 『帽子収集狂事件』★★
 『ユダの窓』★★
 『白い僧院の殺人』★★★

では、さらば、クイーン、クリスティー、カー、ヴァン・ダイン!(涙

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COMMENT

ううう・・・

なんちゅう・・・思い切ったことを。
でもまあ、精神的風土がちがうからなあ。彼らとは。
わたしも時間が限られてる中で(昨日も定年したての方が朝起きてこないので見に行ったら亡くなられてたそうです。今日、夫婦でお通夜に・・・←朝からすんません)、読みたいものがたくさんあるなか、ちょっと読んで、こりゃ、あかん、と思ったものはすぐ放棄するくせがついてしまってます。(ねじ式ザゼツキー、駄目でした)
我慢して読み続けたら最後でよかった!となったかも、という後ろ髪も振り捨てつつ。

>なんちゅう・・・思い切ったことを。
もうやけくそです。
でも、世評が高いからと言って自分が心底楽しめないものを
読むのも時間がもったいないですからね。
人生の時間は少ないですから。

>ねじ式ザゼツキー、駄目でした
ダメでしたか。まあ、あれはダメな人にはダメでしょうね。
(たいしたふぉろーになってない!)

>後ろ髪も振り捨てつつ。
僕はもう後ろ髪がもう全部抜け落ちそうですよ(;^_^A

今日はクイーンの誕生日だそうですね~。タイムリーな?さよなら宣言(^.^)でも、これだけ読んでらっしゃるなら充分では?

私はこの4名様は中学・高校時代にあらかた読んで「卒業」しました。一応ミステリファンとしておさえておかねば、と思ったんですねー。面白いと思える作品もあるけれど、納得できないものも多く、夢中にはなれませんでした。

かぎりある人生、時間を無駄につかうのはもったいない、と思いつつ、なかなか読みかけた本は放棄できないんです~(T.T)

のばらさん、あたたかいお言葉ありがとうございます。

>今日はクイーンの誕生日だそうですね~。
そうなんですか! 知りませんでした。すごい偶然だなあ。

>夢中にはなれませんでした。
お仲間ですね。よかったあ。

>なかなか読みかけた本は放棄できないんです~(T.T)
そういう人の方が真っ当ですよ。

おじゃまします。

どうして逆さま?に興味をそそられましたけど・・・
じっちゃんさんの評価はあまりよくないようなので、
縁があったら読むぐらいにしときます。

正直小説で探偵ミステリー物と言うとドイルのホームズしか
ハマった物がないんです。
特別ミステリー好きと言うわけでもないので
ホームズを知っちゃうとなかなか他のに行けませんで・・・

いつかは読もうと積んである本を横目で見ながら、
じっちゃんさんの何時もながらの思いっきりの良さに
感心させてもらってます。
スパッと切れない決断力なさ・・・ホント情けないですわ~^^;

たまの猫さん、おはようございます。

>じっちゃんさんの評価はあまりよくないようなので
他の人の評価はとてもよいんでございますよ。
私の評価はあまり当てにならないんで(;^_^A

>ドイルのホームズしかハマった物がないんです。
ジャパン代表・横溝正史とかもダメですか?

>じっちゃんさんの何時もながらの思いっきりの良さに
それで後悔することもしばし。
会社でも書類をぼんぼん捨ててしまって
後から「あれ必要だった」ってことも多く(;^_^A

はじめまして。

 はじめまして。keiと申します。「たか@ひげ眼鏡」さんの所で、矢吹駆の第1作品名を教えていただきました。どうもありがとうございます。読んでみました。カケルは完全無欠のスーパーヒーローですね。

 エラリー・クイン、ヴァン・ダイン、カー、クリスティに「さよなら」するということですが、本当に残念です。

 エラリー・クインは、「論理的であろう」「読者にフェアであろう」という意識が強すぎて、退屈な部分があるのも確かです。

 ヴァン・ダインは、ファイロ・ヴァンスの膨大なウンチクに付き合っているうち、肝心の推理の方がおざなりになってしまいます。

 カーは、オカルト小説として読むと、超一流ですが、推理小説としてはイマイチですね。

 でも、クリスティは推理小説としてだけでなく、小説として優れていると思います。
 トリックに凝った初期の作品に比べ、中期後期はたいしたトリックは無いのですが、ストーリーで読ませている。

 クリスティの小説を読むと、日本人が「イギリスの中産階級ってこんなんだろうな」と想像している英国がそのままでてきます。
 それにキャリアが長く、小説の舞台も、第1次世界大戦中から1980年ぐらいまでのイギリスを取り扱っており、英国と言う国の変遷が読み取れて、なかなか興味深いのです。
 それに、推理小説だけでなく恋愛小説やエッセイもいい作品がありますよ。

おじゃまします。

横溝さんは遥か昔映画や本を何作が見ましたけど、
謎解きのじれったさがなんとも・・・^^;
やっぱ私にはミステリーは向いてないのかも・・・です。

keiさん、はじめまして。ウェルカムです!
>「たか@ひげ眼鏡」さんの所で、矢吹駆の第1作品名を教えていただきました。
ああ、覚えてます、覚えてます。あの方でしたか。

>カケルは完全無欠のスーパーヒーローですね。
です、です。そこんとこも好き嫌いが分かれる要因かもですね。

>エラリー・クイン、ヴァン・ダイン、カー、クリスティに「さよなら」するということですが、本当に残念です。
まだ動揺してます。復活の日があるかもです(笑) 

keiさんもたくさん読んでおられるんですね~。

>でも、クリスティは推理小説としてだけでなく、小説として優れていると思います。
残念ながら、私が一番最初に見限ったのがクリスティなんですよ。
なぜなのかなあ、肌にあわなくて。

>トリックに凝った初期の作品に比べ、中期後期はたいしたトリックは無いのですが、
>ストーリーで読ませている。
そこんとこがばりばりの本格ファンだった若い私は逆にイマイチに
感じたのかなあ。

keiさんのお話を聞いていたら、クリスティをもう一度読みたくなってしまいました。
他の3人と違って随分長いこと読んでないし、今読んだら評価が変わってくるかもしれませんしね。
うーん、朝令暮改といきますか。

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