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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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クロフツともさようなら?!-『ポンスン事件』


F.W.クロフツ, 井上 勇 / 東京創元社
Amazonランキング:276621位
Amazonおすすめ度:


先だって、クイーン、ヴァン・ダイン、クリスティー、カーに訣別を告げたのでありますが、黄金期の巨匠としてはクロフツも忘れてはなりません。ただ、クロフツは最初に読んだ『樽』の印象があまりよくなく(これはかなり若い頃に読んだというせいもあるかも知れません)、他には『フレンチ警部最大の事件』しか読んでいませんでした。

で、クイーン、ヴァン・ダイン、クリスティー、カーに訣別したのを契機に「クロフツはどうか?」ということで積ン読本の中からこの『ポンスン事件』を選んで読んだ次第です。この本全く魅力の感じられないタイトルということもあって、これまで読む気がおこりませんでした。

でも、こうして読んでみると・・・・これはイケます! 1921年の作品でさすがに古さを感じるところもありますが、そんなのどこかに吹き飛ぶような面白さです。

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刑事が地道に捜査を進めていくというのがまずいいですね。秘密主義の探偵がわかったことをひた隠しにして最後に全員集めて謎解きを披露なんてのではなく、少しづつ謎がほどけていく、あるいは謎が深まっていく過程を楽しむことができます。

しかも謎解きの過程が実に現実的でリアル。天才的ひらめきでパズルを組み立てるように謎解きするのではなく、足でこつこと捜査しながら地道に捜査を積み重ねていきます。もちろん、刑事がチームではなくひとりで行動したり、ちょっと安直に容疑者を逮捕したりなど疑問を感じる点もないではありませんが、それは大きな瑕疵にはなっておらず、小説としてのリアリティは十分に保たれています。むしろ1921年という時代にあってこのリアリティはただもんではありません。

こつこつ地道だからと言って謎解きの意外性に欠けるわけではありません。わずかな手がかりから推理と捜査を積み重ねて驚くべき真相にたどりつくのは1度や2度ではありません。例えば、メモの切れ端の断片的な文字から重要な人物の居場所をつきとめるというのは推理の過程が実に鮮やかかつスリリングでした。

クロフツお得意のアリバイ崩しもあります。現代の目から見るとすごいというほどのトリックではないかもしれませんが、1920年代という時代を反映したアリバイトリックになっていて私は楽しめました。それに、クロフツはそのアリバイ崩しだけに頼ってはいません。さまざまな工夫を投入して読者を楽しませます。

例えば、アリバイを崩したらそれでおしまいではなく、その後に二転三転の展開を持ってきていること。素人探偵(ホームズのような職業的探偵ではなく一般人)が登場して刑事と謎解き合戦をするのも楽しい趣向です。元祖トラベルミステリ作家(私が勝手にそう称しているだけですが)のクロフツらしい展開(ネタばれになるので詳述は避けます)もあり、この展開には驚かされました。

本格ミステリですが、トリックや謎解きだけに頼らず、巧みなプロットでサスペンスを盛り上げて読者が惹き付けられる面白い読み物にしようと努力している点にも感心します。一例をあげると、容疑者のひとりに読者が自然に感情移入するように持っていって、読者をハラハラドキドキさせるところなど心憎い演出と言えましょう。

もちろん本格ミステリとしての結構もしっかりとしていますし、最後に顕われてくる真相も意外性十分。クロフツすごいじゃん!とクロフツを見直させられた一品でした。

唯一難を言えば、物語の舞台となる土地の地図がないこと。そのため犯行当時の関係者の動きやアリバイトリックがわかりにくくなっており、少しイライラさせられませす。この点はちょっと残念でした。

【じっちゃんの評価:★★★★】
P.S. 『スローライフで行こう』の教えに従って、スローリーディングを心がけたのもよかったかも。先を急がず、分からないところがあったら立ち止まってもう一度読んだり、関係ある前の方を読み返したり。こういう余裕のある読み方をしたら、訣別宣言したカー、クイーン、クリスティ、ヴァン・ダインも面白く読めるかも。仲直りしようかしらん?

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COMMENT

なつかしい!

今はあんまりミステリを読まないのですが、中高生の頃はよく読んでいました。それも、文庫、早川と創元の文庫で。なもので、この古い創元文庫の表紙はなつかしい! 中身より装丁が印象に残ってます。
クロフツは『樽』しか読んでないんですが、久しぶりに読んでみようかな。

こんばんは^^

クイーン、クリスティー、カーは昔色々読んだことありますが
この作家さんのは読んだことなかったりです。
じっちゃんさんがいうならリアリティーは確かなものだと思いますし、
個人的にはアリバイトリックを崩した後の二転三転が私好みかと思います^^
脳内メモに追加しましたので、また機会があれば読みたいと思います。

空犬さん、シンさん、おはようございます。

他の方の書評を読むと、「アリバイトリックがしょぼい」というものもあり、
やっぱりこういうところは人それぞれですね。
アリバイトリックは今の目から見ると確かに精緻さには欠けますが、
それなりの工夫がされていて私は楽しめました。
でも、本文にも書いたように、この作品はアリバイトリックそのものには
それほど寄りかかっていなくて(重要な要素であることは間違いありませせんが)、
それよりも、謎解きの過程や、それも含めたストーリー展開の
面白さに妙味があるように思います。
是非読んでいただいて私の感想が正しいかどうか確かめていただけると
うれしいです。(ちょっと怖い気も・・・)

TBさせて頂きました。

個人的には、本格と言うより、警察小説的な印象でしたー。
中々面白かったですけども。

たかさん、こんにちは。
ご訪問ありがとうございます!
後でポンスン事件の記事読ませていただきます。

>個人的には、本格と言うより、警察小説的な印象でしたー。
そうですね。本格には本格だと思うけど、謎解きという意味では
弱いですもんね。謎解きよりストーリー展開で読ませる小説という感じです。

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ポンスン事件

ポンスン事件 を読む。クロフツの古典ミステリ。 意外にも、結構面白く読めました。と言っても、いつもの地味な事件に坦々としたアリバイ捜査、という基本は変らないのですが。こちらがクロフツに慣れて来たせいもあるかなあ? まあでも、取敢えず今後暫くはクロフツ....
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