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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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"False Impression"-または『ゴッホは欺く』


 

Jeffrey Archer / St Martins Mass Market Paper(2006/11/28)
Amazonランキング:884位
Amazonおすすめ度:


名画を巡るミステリというとどうしても『ダ・ヴィンチ・コード』を思い浮かべてしまいますが、『ダ・ヴィンチ・コード』が絵画自身とその背景に潜む謎を核としたミステリだったのに対し、こちらはそうではなく、ゴッホの名画「耳を切った自画像」(写真後掲)を巡る争奪戦をテーマにしたミステリになっています。

主人公はあの世界的美術オークションハウス・サザビーズを辞めたばかりの若き女性美術コンサルタント・アンナ。これに対する敵役は悪徳銀行家フェンストン。フェンストンが「耳を切った自画像」の持ち主から汚い手で名画を奪い取るのをアンナが防ごうとします。

二人の攻防戦はニューヨークを基点にロンドン、ブカレスト、モスクワ、そして東京(!)と世界狭しと繰り広げられます。そこにアンナを狙う女殺し屋クランツ、フェンストンの悪行を暴こうとしてアンナを追いかけるFBI捜査官ジャックが絡んでサスペンスを盛り上げます。

さて、東京が出るからには日本人の登場人物もと期待しちゃいますよね(一方でヘンな奴が出てこないかという心配もありますが)。

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出てきますよぉ。それも相当重要な役割で。しかも、ご心配なく。相当カッコいいです。『ラストサムライ』の渡辺謙にも負けないくらい。思わず拍手したくなるくらい水際立った活躍をします。
ゴッホ自画像
 ※ゴッホの「耳を切った自画像」⇒
   (ウィキメディア・コモンズより)
   ・・ゴッホの右後ろに浮世絵が見える・・

彼および日本に対するアーチャーの描写は、ステロタイプなところがまったくないとは言いませんが、昔の小説や映画のようなおかしな描写はほとんどなく、登場する街や人物の描写も自然かつ正確、しかも好意的なので日本人としては好感度大です。

さて、物語の出来はどうでしょうか。

私は物語を評価する際に、主人公へ感情移入できるかどうかを結構重視するのですが、主人公のアンナがなかなか素敵ですし、敵役のフェンストンが相当悪どいだけに、この点は難なくクリアしています。感情移入できたところでフェンストンとの頭脳戦、殺し屋・FBI捜査官が入り乱れる追跡劇が始まり、結構ハラハラドキドキさせられます。

また、あの9・11の同時多発テロが冒頭で登場します。しかも主要登場人物たちがあのノース・タワーを仕事場としているという設定になっているため、彼らを巻き込んだ迫力あるシーンが繰り広げられます。ここだけでも読む価値ありです。私、その場面を読んでいて9・11にまつわるノンフィクションを読みたくなりましたもん。

総体的にサスペンスミステリとしてはまずまずの出来です。--「まずまず」どまりなのはいくつか難点があるからです。

まず、敵役のフェンストンがワル過ぎます。仮にも銀行家として名を成していながらここまでやる奴がいるとは思えません。しかも意外に間抜けなので、そのためアンナとの頭脳攻防戦にイマイチ冴えがありません。また、FBIも負けず劣らず間抜けなのもイマイチ感に輪をかけます。

ミステリとしての謎が乏しいことや、せっかくのゴッホの名画が単なる道具にしかなっていない(ゴッホの名画を他の作家の作品と入れ替えても全然問題ないくらい)のも物足りなく感じられます。

とはいえ、最初から最後までサスペンスが途切れることなく、さっくりと読み通せるのは、さすがアーチャーと言えましょう。

英語はそれほど難しくなく、中級程度の実力のある方ならすいすい読めるのではないでしょうか。

【じっちゃんの評価:★★★】

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