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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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畏るべし「言葉の力」~『英語の感覚・日本語の感覚』



英語の勉強を趣味にしていたり、仕事や私生活で文章を書く機会が多いこともあり、普段から「言語」には興味があり、その手の本は結構読んでいます。そういう本を読んでいて感じることは言葉の持つ「力」です。言葉は単なるコミュニケーションのツールであることを超えて、それを使う人々の行動様式やメンタリティ、生活様式・・・これらをひっくるめて「文化」としておきましょう・・・と深く結びついていることがわかります。「文化」が言葉のあり方を規定していますし、逆に言葉が「文化」に影響を与えています。それも、私たちの想像を超えて。

この『英語の感覚・日本語の感覚』も、英語を切り口にしてそのあたりをまざまざと気づかせてくれます。

--------------------
「同義語」という言葉があります。もちろん意味は「形は違っても意味が同じ言葉」のことです。著者はいきなり冒頭で「厳密な意味での同義語は存在しない」と言い放ちます。このあたりはちょっと強引な気もしますが、それはそうだということにしておきましょう。

次に著者はこれを敷衍して、同じことが「文法構造」にもいえると言います。つまり、文の形が違えば一見意味が同じように見えても、やはり意味の違いはあるのだと。例をあげましょう。

  a) John showed Mary a photo.
  b) John showed a photo to Mary.

この2つの文の意味は違うというんですから驚きですよね。だって私たちは「この2つの文は全く同じ意味であり、相互に交換可能」と教わりましたもんね。著者自身「この2つの文の<意味>が異なると言われるのはかなりショックかも知れないが」と言っていますが、ホント、私は著者の思惑通りショックを受けました。さて、それでは、どこがどう「異なる」というのでしょうか?

ヒントを出しましょう。この2つの文の後ろに別の文をくっつけてみます。

  a') John showed Mary a photo.
     But, she didn't see it because she was sleeping.
  b') John showed a photo to Mary.
     But, she didn't see it because she was sleeping.

すると・・・どちらかの文が不自然に感じられるというのですが、どうですか、わかりますか? 英語に普段慣れ親しんでいない方だと分かりにくいかも知れません。口幅ったいようですが、私はすぐにピンときました。

答えは、つまり不自然なのは、a') の方です。なぜでしょうか。

それは、a') の元の文であるa) は写真をMaryが「見た」ことが含意されるからだと著者は言います。だから、その後に続く文で「見なかった」というのはおかしいというわけです。これに対してb') の元の文であるb) では必ずしもMaryが写真を見たとは限らず、b') の方は不自然に感じられないのです。

それではこの違いはどこから発生しているのでしょうか? それは両方の文における"Mary"の扱いから発生しています。つまり、a') では"Mary"が"show"の目的語になっているのに対し、b') ではto-前置詞句になっています。ここが違いの源になっているというわけです。

※以下、著者の説明そのままではなく、私が理解し咀嚼し考えた内容を付加して説明します。よって理論的な誤りがあればそれは私の責に帰する可能性が大いにあることを予めお断りしておきます※

"to"は方向性を表す前置詞です。つまり、"to"の前に来る動詞の行為が"to"以下の名詞に向かっていることを表します。よって、b) やb') における"to Mary"は「写真を示す(show)」という行為がMaryに向かって行われたことを示しているだけで、写真を "Mary"が見たかどうかは保証の限りではありません。

一方、a) やa') の"Mary"は"show"の目的語であり、"show"という行為が直接"Mary"に及んでいることを含意しています。よってa) やa') では写真を"Mary"が実際に見たことが含意されるのに対し、b) やb') ではそれが含意されません。これがa') が不自然に感じられる原因です。

同様なことが"that+名詞節"にも言えると著者はいいます。"I told him that ~"のような場合、文法書では「thatは省略可」と書かれていますが、それは違うと著者は言います。名詞節の内容が「既知」であれば"that"を取り、「未知」であれば"that"が省略されるのだと。したがって、以下の2つの例のうち、d) は自然だがc) は不自然だと言うのです。その理由を説明していると長くなりますので、割愛します。関心のある方は実際に本書にあたってみてください。

  c) The forecast says that it is going to rain.
  d) The forecast says it is going to rain.

著者の「形が違えば意味も違う。同義(語、文)というものはありえない」という主張が少しはご理解いただけたでしょうか?

著者はこうした興味深い議論を展開しつつ、次第に日本語と英語の違いに切り込んでいきます。その論を要約するのは困難ですし、危険でもありますが、あえて「さわり」だけを示しますと・・・。

著者は、日本語は<BE言語>であり、英語は<HAVE言語>だと言います。<BE言語>とは「所有」を表すのに「存在」を表す動詞を用いる言語であり、<HAVE言語>は「存在」を表すのに「所有」を表す動詞を用いる言語です。わかりやすい例をあげましょう。

 <存在>
  e) 日本語: この部屋には窓が2つある
  e') 英語: This room has two winndows.

 <所有>
  f) 日本語: 私には子どもが2人いる
  f') 英語: I have two children.

このように、英語は「存在」を表すのに「所有」を表す「have」を用い(e')、一方日本語は「所有」を表すのに「存在」を表す「いる」を用いています(f)。

で、日本人としては気に入らないのですが、人間の言語の歴史をたどると、もともと<BE言語>であったものが、後になると<HAVE言語>に移行する顕著な傾向があるというのです。つまり<HAVE言語>の方が<BE言語>言語より進化した形なのです。ということは、将来日本語も<HAVE言語>に移行してしまうのでしょうか?(※)
  ※ 著者は「その可能性あり」としています。

その他にも興味深い議論満載で、例をあげると・・・「英語は自分を客体化するのが得意。一方日本語はある事象を自分が関わった臨場的なものとして表現するのが得意」、「『本を読んで"あげる"』『勉強を教えて"くれた"』などに見られる授受動詞の使い方は日本語にしか見られない」、「日本語ではある結果の「起因」への言及を避ける傾向がある」等々。まさに目から鱗がぽろぽろ落ちます。

こうした「目から鱗」の議論を興味深く読んでいるうちに、冒頭で書いたように、言語が文化に強く支配されていること、文化が言語に強く支配されていることに気づかされます。日本文化のメンタリティにどっぷり浸かっているわれわれ日本人が英語に違和感を感じるのは当然なのです。これが日本人の英語ベタの一因なのかもしれません。

英語に関心のある方はもちろん、日本語や言葉のありかたに関心のある方におススメです。

【じっちゃんの誤読的評価:★★★★】

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COMMENT

私は世間に通用しないであろう独自のことばの感性をもっています。
そしてそれをひとり楽しんでいるのです。(^_-)

>a) John showed Mary a photo.
え~あの写真Maryに見せちゃったの!それは問題だわ。
じっちゃんに見せたのならかまわないけど。。。

> b) John showed a photo to Mary.
え、写真をみせたの?どの写真?
まさか元カノが写ってるのじゃないでしょうねっ!

な~んてね^_^;

主語が何か
目的語が何か
によって私のドラマも変ります。

ちょっと外れるかもしれませんが・・・
大分前のワカモノことばで大のお気に入りがあります。
『よさのってる』
強風などでヘアスタイルが乱れたときに使います。

もうお分かりでしょ?
『与謝野ってる』
そう
『みだれ髪』です。

難しいことはさっぱり解らない私ですが
言葉の持つ力の凄さは感じることがあります。
実例をさっと思い出さないけれど^^;
言葉で人を殺したり生かしたりも出来ますからね。
私など文章を書くことは苦手
かといって話術もさっぱりですが
馬鹿話をべらべら喋り捲ることが多々あります。
で、大笑いしたあととか 人の話を聞いてて
もしかして 相手を傷つけてることがあったかも・・
と殊勝に一人で反省することもたまにありです。
なんかピントずれてるコメントですかね。
お恥ずかしい・・・(#^.^#)
ところで、
よさのってる→与謝野ってる→みだれ髪
ここまで、移行するのですか。言葉が。
学もないと 現代若者語にもついていけませんね(^^ゞ

はじめまして、じちゃんさん。

時々、拝見させていだいています。
すごくあたたかいブログで。。。

私も言葉に興味がありますので、
(英語をやってましたが、一向にだめなままです。
努力不足ですね。。。恥ずかしいですが。。。)

この本よみました!おもしろいですよね!

同じ NHKBOOKSで、 英語の発想 日本語の発想
外山滋比古先生 の本がすきです。
やさしい文章で書かれているので。

もう、読まれてるかしら?

とらみさん
「よさのってる」
学校で習ったばかりの若者なればこそ・・・ですよ!

ケイさん、こんばんわ。
コメントいただいた上に、
とらみさんへのコメント返しまでしていただいて恐縮です。

さすが、ケイさんですね。
言葉の楽しみ方を知ってますね。感心。

「よさのってる」は知ってましたよ。
何しろこの本を読んでたんでね。
⇒http://jitchan.blog67.fc2.com/blog-entry-292.html

とらみさん、こんばんわ。
>言葉で人を殺したり生かしたりも出来ますからね。
まさに、「呪い」ってそれですよね。
日本には「言霊」って概念もありますしね。
私は「言霊」ってのは信じているっていうか、
信念のひとつになっています。

>もしかして 相手を傷つけてることがあったかも・・
>と殊勝に一人で反省することもたまにありです。
私も日々反省の毎日です。
自分の言ったことに対して反省できるってのは
悪いことではないと思います。

ほんにゃんさん、はじめまして&こんばんわ。

>すごくあたたかいブログで。。。
ありがとうございます。
最高のほめ言葉です。
私、胸がきゅっとなりました。

>私も言葉に興味がありますので、
おおっ、同士ですね!

>英語をやってましたが
おおおっ、ますます同士ですね!

>この本よみました!おもしろいですよね!
すごい、この本を読まれるってことは
英語結構デキるんではないですか?

>同じ NHKBOOKSで、 英語の発想 日本語の発想
>外山滋比古先生 の本がすきです。
外山先生の本は何冊か読んでますが、
この本の存在は知りませんでした。
アマゾンでチェックしてみます。
ご紹介ありがとうございました。

ほんにゃんさん、今後ともよろしくお願いいたします。
ほんにゃんさんのブログにも後で押しかけさせていただきます。

とても興味深く読みましたよじっちゃん様!
何故って、ピットママが勉強しているテキストの中にも
こういったのがありました v-411
だから読んでいて、とても頷きなら成る程ね~
と思いましたよ~

外山滋比古さんのエッセーは昔、むか~~~し読みました
でも内容は、すっかり忘れてしまいましたけど・・・・

HAVEの使い方は、とても多様ですよね
頭が痛いとか風邪をひいたとか・・・・
やっぱり自己主張のお国柄、自分が主体をアピールするから
からなのでしょうか?

スタバで珈琲を頼む時も I have と後から来た外人さんが
注文の時使ってましたよ~
その後なんて言っていたのかはお釣りを貰いながらだったので
聞き逃してしまったのですけどね v-388

ピットママさん、おはようございます。

ピットママさんが勉強されてるテキストにも
同じようなことが書いてあったんですが。
だとしたら、著者オリジナルの考えじゃあないのかな。

HAVEは英語の最重要単語のひとつですね。
あの使い方が分かるだけで、英語、
特にライティングとスピーキングがうまくなるはず。

「言霊」
ことだまの類に入るかどうか分かりませんが・・・
神さまは私達の使う「ことば」に必ず反応するような気がしています。
例えば
「できない」という言葉を使うと、ちゃんと(?)出来ない方向へと向けます。
「できる」という言葉を使うと出来る方向へと導いてくれると、
妙に確信しているのです。
ですから、私は「NO」の類の言葉は滅多に使いません。

でもたまに、思ってもいない言葉が口をついてでてしまうことがあって、
そのときは神さまにクレームをつけます。^^;
(「神さま」・・・幼稚な表現ですね。)

ケイさん、こんにちは。
まさにおっしゃる通り。
「言霊が私の信念」というのは
そのことを言っています。

私も「No」の言葉はなるたけ使わないようんしてます。
仕事ではそれで苦労することもありますけどね(;^_^ A

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