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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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意外にシリアスで驚いた-『探偵物語』


/ パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン(2005/11/25)
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『探偵物語』と言っても松田優作主演のTVドラマではありません。『ローマの休日』『ベンハー』などで知られるアメリカ映画の巨匠ウィリアム・ワイラー監督が1951年に撮った作品です。NHK衛星放送第2でこの春放映したのを録画しておいたものをこの日曜日に観ました。

世界陸上の中継開始まで間もない時間に見始めたので、世界陸上も観たかった私は、最初は「途中まで観て後は後日」のつもりだったのですが、観始めたらどんどん物語に引き込まれてしまい、結局最後まで観てしまいました。

『探偵物語』とうタイトルからは、フィリップ・マーロウのような私立探偵が颯爽とした活躍を見せるドラマを想起してしまいますが、そうではなく刑事たちが主役の人間ドラマです。原題は"Detective Story"であり、本来ならば『刑事物語』と訳すべきところでしょう。もっとも、映画公開当時は刑事=探偵で通用したのかも知れませんが。

物語はニューヨークの21分署を舞台としてその一日を描くシチュエーション・ドラマ。場面が21分署以外へ移ることはほとんどありません。主演はカーク・ダグラスで、正義感あふれる硬派の刑事を演じています。

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万引き女が連行されてくるのを皮切りに21分署には次々と犯罪者が連行されてきます。不正堕胎医、店の金を使い込んだ若者、押し込み強盗・・・・。その他にもネタ探しに来る記者、次々と苦情を持ち込む住民、被疑者の取り扱いについて抗議しに来る弁護士などで21分署は騒然としています。これら複数の事件や出来事が同時並行的に進行していきます。そのごった煮のような、雑然とした中にも活気があり、それぞれの事件にそれぞれのドラマがある展開がこの映画の魅力のひとつでしょう。

題名からくるイメージや、最初に連行されてくる万引き女やその後に来る押し込み強盗がコミカルなキャラクターであることなどから、軽妙で洒落た、時にはお涙ありの人情ドラマになるのかなと予想して観ていたのですが、その予想を裏切ってドラマは途中から思いがけずシリアスな展開になっていきます。

カーク・ダグラス演じるマクラウド刑事は正義感にあふれ、その正義感に基づく確固たる信条の持ち主。しかし、その信条に忠実であろうとするあまり融通が利かず、時に杓子定規で人情味に欠ける行動をとってしまいます。上司や同僚たちは「もう少し柔軟になれ。人情を持て」と忠告しますが、マクラウド刑事はいっかな耳を貸そうとせず、その頑なさに同僚たちのみならず観客ももどかしい思いをします。そのもどかしさが募ってきた頃ある"事件"が起こり、それを契機にマクラウド刑事の心も揺らぎ始めます。自分の信条と現実との間で板ばさみになって悩み苦しむマクラウド刑事をカーク・ダグラスが迫真の演技で演じ、その苦悩が観るものの胸に迫ってきます。

そして、このマクラウド刑事の苦悩を取り込みながら、同時進行していたさまざまな事件はドラマチックな結末へと収斂していきます。

私はこの映画を観終わった後しばし呆然自失となって、席(といっても、フローリングの床ですが)を立つことができませんでした。結末の衝撃と感動、それに対する登場人物たちの心情、結局解決されずに残ったもろもろの出来事への思い。それらが頭の中で渦巻いてすぐには整理がつかなかったのです。

欠点もないではありませんが、警察署の1日を描きながらさまざまな人間模様を浮かび上がらせた骨太の人間ドラマを構成しつつ、最初から最後まで観客を飽きさせない娯楽作品にも仕上げているあたり、さすがウィリアム・ワイラーです。

と褒めたところで、ネタバレにならないように注意しながら、欠点についても触れておきましょう。

例えば、あの結末。ああするしかなかったのだとも思いますが、その一方で、いろいろな意味でちょっと納得のいかない気もします。

また、一部カタルシスの開放が不十分な点があって不完全燃焼のような気持ちを感じました。ただし、この点については、すべてのカタルシスを開放しては最後に余韻が残らず、娯楽映画としてはともかく、芸術作品としては問題があるのかも知れません。

私が一番納得のいかなかったのは、重大な失策(と私は思うのですが)を犯した署長がさして深く悔いる様子を見せないこと。彼はもっとそのことで苦悩してもしかるべきだと思います。その苦悩を深くしつこく描写する必要はなく、さらっとちょっとした演技で見せるだけでも物語に奥行きが出たと思うのですが。

最後に。マクラウド刑事の奥さん役をつとめるエレノア・パーカーが古きよき時代の正統的知性派美人女優で、私ちょっと、いえかなり魅了させられました。

【じっちゃんの評価:★★★☆】

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COMMENT

こんばんは。
51年とはまた古い映画ですね。
それでも面白いということはやはり物語がいいのでしょう。
脳内メモに書き込みしておきました^^

シンさん、おはようございます。

さすがウィリアム・ワイラーって感じですね。
脳内メモかあ、いいことばですね。
その言葉私の脳内メモに刻みました。
今度使ってみよ。

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