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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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お久しぶりです、ダイヤモンド警視!-『単独捜査』

単独捜査

単独捜査 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ピーター・ラヴゼイ, 山本 やよい
早川書房(1999/08)
¥882


久々のラヴゼイ、久々のダイヤモンド警視です。ダイヤモンド警視シリーズ第1作である『最後の刑事』を読んだのが3年ちょっと前。それ以来のラヴゼイです。ラヴゼイは読んだ作品こそ少ないですが、その数少ない作品の中に『偽のデュー警部』『苦い林檎酒』というミステリ史に残る大傑作(※)があるということもあって、お気に入りの作家のひとりです。
 ※『偽のデュー警部』は週刊文春ミステリベスト10・20世紀海外部門の21位に
   ランクインしています。

ダイヤモンド警視シリーズはラヴゼイの代表的シリーズであり、今回読んだ『単独捜査』はシリーズ第2作にあたります。これに続く第3、4作目の『バースへの帰還』『猟犬クラブ』は英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞を連続受賞し、本格ミステリの傑作との呼び声も高い作品です。よって、私も以前から読みたくてたまらなかったのですが、にもかかわらず、なぜ『最後の刑事』以来3年以上もの間が空いてしまったかというと、『最後の刑事』がイマイチなできであったのに加え、第2作目の『単独捜査』もミステリテイストの乏しい平凡な出来の作品だとの評判だったからです。

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ならばいきなり『バースへの帰還』なり『猟犬クラブ』なりを読めばいいじゃないか、と思われるかも知れませんが、私はシリーズ物は第1作目から読まないと気がすまない性分なんですよね。シリーズ物ってのは、回を追うごとに主人公が成長したり、主人公を取り巻く環境が変わっていったりと、シリーズを通しで読むことによって新たに立ち上がってくる物語があるので。現にダイヤモンド警視シリーズでもダイヤモンド警視が警察をクビになったり、また復帰したりという紆余曲折があります。

というわけで、読まなくちゃと思いながらも敬遠していた『単独捜査』ですが、とうとう意を決して(<=大げさな!)読んでみました。

先ほどシリーズ1作目の『最後の刑事』がイマイチだったと書きましたが、その原因のひとつは主人公であるダイヤモンド警視の灰汁の強い性格に感情移入ができなかったことです。

相撲取りのような体格(※)の巨漢。思い込みが激しく、頭より身体が先に動くタイプ。思ったことはずけずけ口に出し、我が強く思ったことは強引に押し通して、挙句の果てに暴走する。こんな性格ですから上司や同僚からも煙たがられています。これでは聖徳太子の「和を以って貴しとなす」が信条の私とは気が合うはずもありません。
 ※これは私の勝手な形容ではありません。なんと『単独捜査』には日本の相撲取りが
   出てきて(!)、ラブゼイ自身がダイヤモンド警視をこのように形容しているのです。

この物語は日本人には興味深い設定となっています。というのは、ダイヤモンドが取り組む事件の中心人物が日本人少女なのです。そして、なんと、事件を追いかけてダイヤモンドがとうとう日本にまで来てしまいます。

前作『最後の刑事』で自分の失敗から警察をクビになったダイヤモンド「元」警視はデパートの警備員をしています。ある日閉店後のデパートを巡回していたダイヤモンドは自分の受け持ちである家具売り場で侵入者を発見します。その侵入者というのが日本人の少女。少女はダイヤモンドや警察の質問に対して一言も口を利きません。名のり出る親権者もなく、自閉症を疑われた彼女は自閉症の子どもを専門に扱う施設へと送られます。

デパートへの侵入(というか居残り)を許した責任を問われてダイヤモンドは警備員をクビになってしまいますが、気にかかるのは自分の再就職よりも施設に送られた少女のこと。なぜ少女は閉店後のデパートに忍んでいたのか? 彼女の親権者はなぜ名のり出ないのか? そもそも彼女はいったい何者なのか? 彼女は本当に自閉症なのか?

元来子供好きで、見かけや言動に似合わずやさしい心根の持ち主であるダイヤモンドはとうとう少女を訪ねて施設へ押しかけます。職員を強引に説き伏せて少女の面倒見役を買って出るダイヤモンド。そこからダイヤモンドと少女の交流が始まります。涙ぐましいダイヤモンドの努力にもかかわらずいっかなダイヤモンドに心を開こうとしない少女。それでもダイヤモンドはあきらめません。やがて少女は少しずつダイヤモンドに心を開き始めたかに見えたのですが・・・・。

あらゆる伝手を使って少女の親権者を探し出そうとするダイヤモンドの努力が裏目に出て、ある日少女は少女の母親を名乗る不審な女性に誘拐されてしまいます。

そこから、少女と拉致女性を追いかけてのダイヤモンドの執念の追跡行が始まります。ここからはスピーディな展開に加えて、ラヴゼイお得意のストーリーテリングの巧みさが相俟って仰天の結末まで一気呵成に読ませます。さまざまな謎に、「少女の運命やいかに?」という強烈なサスペンスが加わってスリリングな物語が展開され、ページを置くあたわずの面白さです。

今「仰天の結末」って書きましたが、ホント掛け値なし「仰天」ですから。といっても、大どんでん返しがあるとかそういうことではなく、「こんな決着のつけ方あり~?」というもの。特に日本人は余計に唖然呆然でしょう。あの、これ、必ずしも悪い意味で言ってるのではありませんのでお間違えなく。

世評通り、ミステリのテイストは薄く、ましてや本格ものではありません。アクション+サスペンス+謀略小説+トラベル・ミステリの趣ですが、そんなジャンル分けはともかく、面白い小説であることは確かです。

前作では感情移入できなかったダイヤモンドですが、前作で彼の傍若無人な性格に少し馴染んだことに加えて、捜査の対象が感情移入しやすい日本人の少女だったためでしょう、今回はきっちり感情移入できました。

ラヴゼイ描く日本は、力士の描写をはじめ何だかなあというところはあるもののそれほどひどくはありません。物語を進行するのに忙しくて日本の情景描写が少ないのがむしろ物足りないかな。でも、のんびり情景描写していたら物語の流れが損なわれてしまう可能性もあるのでやむをえないのかも。

というわけで、思ったより楽しく読めました。でも、やっぱりラブゼイには「ミステリ」を期待したいですね。そういう意味で本格ミステリの傑作の呼び声高い『バースへの帰還』を読むのが楽しみになってきました。

【じっちゃんの評価:★★★】

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COMMENT

じっちゃんさん、こんんちは。先日は拙文を読んでくださり有難うございます。
改めてブログを読ませていただき、読書量に感服しました。
いろいろ読んでいらっしゃるんですね。

ラヴゼイはどれを読んでもハズレがありませんね。
読後の後味がよいのが好きです。比較的多作なのも嬉しい。
最近のミステリは「サイコ」ものが多くて、犯人がみんな変な人ばかりなのが
気に入らないのですが、そんな中でラヴゼイには今後も頑張って欲しいですね。

『バースへの帰還』のレビューを含め、今後も更新を楽しみにしています。

同感

slycatさん、いらっしゃいませ~。

>読後の後味がよいのが好きです。
ほんとにそうですね。
私は、暗い、汚い、残酷な話はキライなので
(例えば馳星周とかジェイムズ・エルロイは大の苦手)、
ラヴゼイのようなさわやかな読後感のものがいいです。

>『バースへの帰還』のレビュー
合点承知!
近いうちに読みます。

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