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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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ミステリ版『心の旅路』?・・・『霧の壁』

霧の壁霧の壁
フレドリック・ブラウン, 田中小実昌訳
創元推理文庫(1960/12) ¥200

祖母の死体を"発見"した「ぼく」は警察に電話をかけながらショックで記憶喪失に陥ってしまう。・・・そこから「ぼく」の真実探しの"旅"が始まる。いったい祖母を殺したのは誰なのか? もしかしらた自分なのか?・・・そんな「ぼく」の前に記憶喪失という「霧の壁」が立ちはだかる。別れた妻、腹違いの兄、会社の同僚、祖母の弁護士、殺人課の刑事・・・彼らに対する「ぼく」の執ような聞き込み調査がその「霧の壁」を少しずつ切り崩していく。そして。ついに「霧の壁」の向こうから驚愕の真実が現れてくる。祖母を殺したのは誰だったのか? 「ぼく」は記憶を取り戻すことができるのか?

この本のじっちゃん流紹介文です。どうです、面白そうでしょう。手にとって読みたくなりませんか? 

フレドリック・ブラウンは『発狂した宇宙』『火星人ゴーホーム』『未来世界から来た男』といったSFで有名ですが、ミステリ作品もたくさん残しています。というか著作数だけで言えばミステリ作品の方が遥かに多く、ミステリの方が本業なのかも知れません。

フレドリック・ブラウンは何よりも読者を楽しませることを最大の目的にした職人的作家で、重厚さには欠けるものの楽しさのあふれた作品をたくさん残しています。SFでもミステリでも奇抜な着想の作品が多いのが特徴です。

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この『霧の壁』も、記憶喪失にかかった探偵役という他に例を見ない設定になっています。しかもその探偵役が犯人かも知れないのです。「探偵役が実は犯人だった」というトリックは珍しくありませんが、その場合は当然のことながら犯人である探偵役自身が犯行を暴くことはなく、別の名探偵が犯人を名指しすることになります。それに対し『霧の壁』は探偵役=記憶喪失という設定にしたことにより、探偵役自身が自分が犯人かも知れない犯行の真実を追求することになり、そこに強烈なサスペンスが生まれます。

この強烈なサスペンスの中事件の謎が少しずつ解きほぐれていくだけでも十分面白いのに、この作品にはもうひとつの魅力があります。すなわち、「ぼく」は事件以前の記憶を一切喪っています。その喪われた過去が、事件の解明とともに少しずつ明らかになっていくところが、これまたミステリとして抜群に面白いのです。

一例をあげますと、事件の直前に「ぼく」は妻と別れているのですが、記憶を喪った「ぼく」には事件後に会った元妻がとても魅力的な女性に見え、別れた理由がさっぱりわかりません。しかも元妻自身「ぼく」を今でも憎からず思っている様子。いったい「ぼく」はなぜこの魅力的な女性と別れなければならなかったのか? 元妻が事情を話してくれればすぐわかるはなしですが、なぜか元妻は頑なに離婚の事情を話そうとしません。元妻がそれほどにも頑なに事情を語ろうとしない離婚の原因とはいったい何なのか? 「ぼく」はそれを周囲の話だけで推理するしかないのですが、これが一個の立派なミステリとなっています。

他にも、腹違いの兄の不審な言動、同僚の女性との関係、弁護士と祖母との関係など同様の謎がいくつも絡み合って興趣を盛り上げます。さらには、記憶喪失のまま「ぼく」はどうやって社会復帰するかという興味も加わって、200数十頁を一瞬たりとも飽きさせることはありません。

残念なのは、謎が解明される最後の詰めが甘く、少しあっけなく思われること。また、明らかになる「喪われた過去」の謎の中にやや肩透かしなものがあるのも残念です。これらがもう一工夫されていれば、ミステリ史に残る名作になっていたかも知れません。

【じっちゃんの評価:★★★】

蛇の足
こんなに面白いフレドリック・ブラウンのミステリなのに、現在新刊書店では手に入りません(さっきアマゾンで調べたら、すべて「在庫切れ」(絶版?)でした)。フレドリック・ブラウンのミステリを読みたいと言う方は古書店をこまめにお探しください。

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COMMENT

読みたくなってしまったのに、古本屋さんを探すのですか~!
ブックオフにあるかなぁ。
作品展が終わっても覚えていたら、探してみます。

それより
じっちゃんはなにもの!

こんな細かい字で長い文章なのに、一気に読んでしまいましたよ。
これも作品展が終わったらですが・・
じっちゃんの文章の書き方を研究してみます。

もしかして、物書きのプロなんですか?

いや~、私もついつい読み込んでしまいました。
ミステリはそんなに数多く読んでいる方ではないのですが、じっちゃんさんの評論を読むと、その本を読んでみたくなります。
ミステリは結構エネルギーが要るような気がします。
娘に借りた綾辻行人のも、頭の中で想像しながら読んでみたので、クタクタになりました。面白かったけど。
最近面白かったのは、ケン・グリムウッドの「リプレイ」です。
ミステリというよりファンタジーに近いでしょうけど。
「時間」の不可思議、を感じさせてくれました。

ケイさん、こんばんは。

そうなんですよね~。
フレドリック・ブラウンを埋もれさすのは惜しいです。
版権をもっている創元社が復刊してくれるといいんですが。
最近創元社は復刊シリーズを出しているので、
その可能性もあるかもです。

>もしかして、物書きのプロなんですか?
恐れ入ります。
プロなんかではないですが、
子どもの頃から作文は得意でした。
会社でも部下の書いた書類に真っ赤にペンを入れるので
「赤ペン先生」と呼ばれてます(;^_^A

みけぼーいさん、こんばんは。

綾辻読まれたんですか。
何の作品でしょうね。
館シリーズならがちがちの本格ですので、
ミステリを読みなれていない方は疲れるかも知れませんね。

『リプレイ』は私も読んでます。
タイム・トラベルものの大傑作ですよね。
あれはいいです。

おお、遂にアップされましたね、『霧の壁』。
なるほど、これは面白そうです。ブラウンはワン・アイデアで一気に長編をもっていく人ですが、これもその代表みたいな作品のようですね。
地の利を活かして、ぜひそのうち入手したいものです(なんせ勤務地が神保町なもんで)。

『リプレイ』いいですねえ。
あの手のお話だと『透明人間の告白』なんてのもバカらしくて大好きなのですが、どうでしょ?

sugataさん、おはようございます。

ワン・アイデアで一気に長編にですか。
たしかにそうですね、ブラウンは。
息詰るような緊密さは感じられないかわりに
スラスラっとよめる面白さがありますよね。
お勤め神保町ですか!
編集をやられているとうことですから当然といえば当然ですか。
にしても、本好きものとしてはうらやましい。

『透明人間の告白』は途中挫折本のひとつです。
今となってはなぜ途中で挫折したのか詳しく思い出せないのですが。

みけぼーいさん、おはようございます。

記事の内容とは関係ない話なのですが・・・・。
以前文字が小さくて読みづらいとおっしゃってましたよね。
偶然その解決法を見つけました。
CTRLキーを押しながら、マウスのホイールを回すと
画面が拡大したり縮小したりします。
「画面ズームバー」と違って画面を切り替えても
元に戻ったりしません。拡大したら拡大しっぱなしです。

これって他のパソコンやマウスでも同じかどうか
定かではありませんが、一度お試しあれ。

P.S.
会社のPCでも試みましたが、NGでした。
やっぱりPCやマウスに依存するのかな。

あらら、入手できないのですか。
残念です。
にしても「ぼく」という一人称が使われてるだけで、
それに関するトリックがあるのかと疑ってしまいます・

シンさん、おはようございます。
残念ながら新刊書では入手不能です。

>にしても「ぼく」という一人称が使われてるだけで、
>それに関するトリックがあるのかと疑ってしまいます
さすがミステリ読みですね。
その通りかどうかは実際に本にあたってみてください。
・・・っていっても無理か。

まあ、ほんまに。どやさ!
とお腹のひとつもたたきたくなる締めですね。
そうですか。おもしろいけどないですか。
でもこの「読ませるレビュー」を読んで読んだ気になっときましょうかね。

まーめさん、おはようございます。
そうなんです。面白いのにないんです。
私のレビューを読んで読んだ気になるのは
危険ですが、とりあえずはそれしかなさそうですね(;^_^A

こんにちわ。
えー。絶版ですか?ブラウンのSFは好きなので、かなり読んでみたい心がむくむくしてきたのに・・・そのうちどこかで出会ったら読んでみます♪

じっちゃんさん、ズームの新方式?をありがとうございました。試してみましたが、残念ながらこの小さなノートパソコン(しかも古い)ではできませんでした。
でも、じっちゃんさんのご親切、感謝です。
最近は、慣れてきて、この文字の大きさでも十分に読めるようになりました。何事も訓練です。
あ、それから、綾辻行人のは「十角館・・」「時計館・・」「人形館・・・」かな?などなど読んでみました。
ミステリを書く人は天才だと思います。理数系出身の作家さんが多いのは頷けますね。

仁香さん、こんばんは。
ブラウン、お好きなんですか!
私も『火星人ゴーホーム』と『発狂した宇宙』は大好きです。
特に『発狂した宇宙』はSFベスト10に確実に入ります。
ミステリも面白いですから、是非お読みを。
・・・って、その前に手に入れるのが難しいんでしたね。
気長にお探しください。
私のを差し上げてもいいんですけどね。

みけぼーいさん、こんばんは。
やっぱりダメでしたか。
お役に立てなくて、すみません。
私も一生に一度はミステリを書きたいななんて思ってます。
理数系ですし。
ま、はかないゆめですけどね。

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