プロフィール

じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
管理者ページ

カテゴリ

openclose

お気に入りブログ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

EQと縁りを戻してみました~『フランス白粉の謎』


エラリー・クイーン, 井上 勇 / 東京創元社(1961/03)
Amazonランキング:97333位
Amazonおすすめ度:

FrenchPowderMystery.jpg
←実際に読んだのはこちら(原書)です。

以前クイーン、クリスティー、カー、ヴァン・ダインの本格ミステリ4巨匠にさよなら宣言をしてしまった私ですが、その後すっごく後ろ髪を引かれてたんですよね。特にクイーン。日本の本格ミステリに最も影響を与えたミステリ作家ですからね。本格ミステリ好きを自認するものがあっさり捨ててしまっていいものかと。

で、何を思ったかというと、原書で読んでみたらどうかと。クイーンに限らずかつての翻訳ミステリって翻訳がひどい場合が多く、それが作品の価値を落としていることは否めません。さよなら宣言のきっかけとなったクイーンの『チャイナ橙の謎』の訳者・井上勇も(たくさんミステリの翻訳をされている方なんですが)イマイチなんですよね。誤訳が多かったり、読みにくかったりというわけではないのですが、文章が古めかしくて泥臭いのが難点。

で、原書というわけです。「これはいいことを思いついた!」ということで、早速エラリーが探偵役の作品を年代順に読んでいこうということにしました。処女作の『ローマ帽子の謎』は既に読んでいますので第2作目の『フランス白粉の謎』から。

--------------------
ところが。有名な作家の作品だから原書も簡単に手に入るかと思ったら、それが大間違い。まず日本のアマゾンで調べたら、新刊はなしで古本のみ。それもすべて数千円もします。それなら、ということでアメリカのAmazonにも行ったのでありますが、ここにも新刊はなし。ただし、古本が4ドルほどで売ってます。でも、アメリカだと送料が高いし。

ハタと困って思いついたのが紀伊國屋。あそこはもともと洋書には強いはずだし・・・と思ってオンラインショップに行ってみたら、ありました、ありました。ちゃんと新刊のペーパーバッグが。・・・というわけで、ようやく入手できた次第。でも、最初からこんな調子で、クイーンの作品を原書ですべて読むなんて野望が実現できるのでしょうか?

前置きが長くなってしまいましたが、肝心の『フランス白粉の謎』、もとい"The French Powder Mystery"の話に行きましょう。この作品は国名シリーズの中で凡作とまでは言わないまでも高い評価を得てはいない作品なのでどうかなと思ったのですが・・・蓋を開けてみると、これが結構面白い。傑作!とまではいかないにせよ、本格ミステリの佳作と言っていいでしょう。原書で読んだのがよかったのか、たまたま作品の出来がよかったのか。まあ、両者でしょうね。原書で読むと、翻訳の質云々で辟易することがないのはもちろん、翻訳を介するのとは違い直接原作者と対するよさがありますし、加えて英語を解読する楽しみ(!)がありますからね。

"The French Powder Mystery"の舞台はデパート。Frenchという苗字のオーナーが経営するFrench'sというデパート(日本語にすると「仏蘭西屋」ってとこでしょうか)で、これが題名につながります。こうまでして国名にこだわらんでもと思ってみたりしますが。もひとつの"Powder"についてはもう少し物語と密接な関係があります。ネタバレにはならないと思うので言ってしまいますが、"Powder"には2つの意味がこめられていて、事件の真相に大いに関係してきます。

さて、その「仏蘭西屋」の、正午きっかりに開くショーウィンドウの中から死体が発見されるところから物語は始まります。というわけで、なぜ犯人はショーウィンドウに死体を隠さなければいけなかったのかというのが第1の謎となります。そしてこれはエラリーによってきちんと納得のいく解が与えられます。ただ、何もショーウィンドウでなくともという疑問は残りますがね。

この作品で素晴らしいのは、第1にこれ、第2にこれ、第3にこれ、だから・・・と論理的に犯人を絞り込んでいくロジック。納得性も高く、「何でこんな簡単なことがオレにはわからなかったんだろう」と臍を噛ませられました。

この犯人を指摘するくだりを読んでいて思い出したのは先日読んだ有栖川有栖の『女王国の城』。あの作品でも犯人をロジカルに緻密に絞り込んでいくのですが、あれを彷彿とさせます。有栖川有栖は日本作家の中でも最もクイーンの影響を受けている作家のひとりですが、本当にそうなんだなあと改めて思いました。

もひとつスゴイのは、例によって今回も提示される「読者への挑戦」の前にエラリーが自分の推理の一端を整理して披露するところ。そこをきちんと読めば読者も犯人を絞り込めるはずなのです。すごいフェアプレーですし、「ここまで書いても犯人がわかる読者はそれほどいまい」という作者の自信が感じられたりもします。

残念ながら問題点もあります。最大の欠点は、クイーンの初期の作品に共通しているのですが、人物描写が無味乾燥なこと。登場人物に人間味が感じられません。また、探偵役のエラリーに魅力が乏しいのも相変わらず。

この作品に限った話では、全体的に冗長なこと。もっと早い段階で犯人がわかったはずで、それを必要以上に引き伸ばしている感があります。また、結末のつけ方にも違和感を感じました。ああいう終わり方はちょっとないよなあ。

ところで、驚くべきしかけがひとつあって、それは・・・あっ、これはネタバレすれすれですからやめておきましょう。でも、アマゾンの読者レビューにはきっちりと書いてあるのでこれから読まれる方は注意しましょう。私は幸いにも読み終わるまで知らず、きっちり驚かされました。

ということで、クイーンと縁りを戻した結果は満足のいく結果となりました。次の作品・・・今度は"The American Gun Mystery"ということになりますが・・・も読む気になりました。この作品は国名シリーズ中では凡作と言われているのでちょっと心配ですが。というわけで、早速紀伊國屋に行って探してみたところ、今度は新刊はなく古本だけ。でも、『九尾の猫』や『緋文字』も入って1500円弱という値段だったので、注文いたしました。

【じっちゃんの誤読的評価:★★★】

スポンサーサイト

COMMENT

『サーノ博士のヒーリング バックペイン』と
『チャイナ橙の謎』と書いたメモがバッグに入っています。
本屋さんの前を通りかかる度に立ち寄り、店員に訊きます。
この本ありませんか~?

どこも無くて、こんなことなら最初に取り寄せてもらえば、もうとっくに手元にきてたのに~^^;。
ドジです。
こんど2冊とも取り寄せなきゃ!

ケイさん、
アマゾンで買えばいいのに。
ただし、『チャイナ橙の謎』は在庫があるようですが、
『サーノ博士のヒーリング バックペイン』は取り寄せのようです。

あ、アマゾンのこと忘れていました~(^^ゞ そうですねっ!
ついでに堀口大学の詩集も買わなきゃ。。。

堀口大學ですか、私も好きです。
って言っても、主にルパンの翻訳者としてですけどね。

おはようございます。ヤスミンです。
エラリー・クイーンは一冊しか読んだことがありません。
「Xの悲劇」だったかな。
ちょっと受け付けないものを感じまして、それ以来読んでません。
時代的なものもあるのでしょうが、
女性や子供に対する視線が、上からの目線なんですよね。
これは現代の男性作家にもいるのですが。
まぁ、わたしは男性(の作家)に対する見方が厳しいとは思います。
クリスティ(のミス・マープルもの)はけっこう好きですし。

確かに原書で読むのと翻訳で読むのとでは
まったく評価が変わることがありますよね。
最近クリスティの「パーカー・パイン」を読んだのですが、
翻訳がいまいちだったんです。
なので、わたしも原書で読んでみようかなと考えています。

原書で読まれる。
流石 じっちゃんさんならではですね。
それにしても原書は当然駄目な私ですが、
時折、本と映画でも全く解釈が変わってることがありますから
原書と翻訳本と違うこともありえるのでしょうね。
心理面など特に。
このお正月休みは読書三昧になりそうですネ(^_^)v

こんにちわ!
翻訳本???っていうところは
ほとんどのかたが感じて
いるところ。。。。で外国のものがあまり
読みたくなくなるんですよね。

ちょっと、話はそれますが、、、
だいぶ、、、ですね。。。

2年位前会社の上司(読書ずきPC好き)
がチャングム(DVD)にはまっていました。

それから、彼の中で韓国ブームがはじまりました。

たまたま、その上司と私が翻訳本はきらいだという話
になりました。私が、最近の翻訳のかたは多くを
自動翻訳をつかっていて、おかしいところを
なおすって聞いて事があると話していたら、、、

なんと、韓国ブームだったかれは、
(語学好きではないですよ)
すぐに、韓国の翻訳ソフトかっていました~。驚きました!

とまた、トピックから離れたコメントをしてしまいました

いつも、本の情報ありがとうございます♪
来年もよろしくお願いいたします。
よいお年を!

じっちゃん様 
今年はいろいろなことを教えて頂きました!
今年1年の中味に彩を添えていただきましたね~
じっちゃん様の本の紹介(勿論他の話題も)はとても貴重なブログです
どうぞ来年もよろしく御願い致します v-218

唯一、お会いできなかったのが残念です
来年も出張でお越しの際はお知らせくださいね
来年はBON JOVIのTourには出かけませんので v-411

では善いお年をご家族と共にお迎えくださいねv-457

>女性や子供に対する視線が、上からの目線なんですよね。
それはよく言われることですね。
クイーンはそもそも人間描写が下手ですし。

>クリスティ(のミス・マープルもの)はけっこう好きですし。
私は逆にクリスティは苦手です。
なんだろうな。あの語り口がだめなのかな。
冗長な感じがして。
理由は結局よくわかりません。

とらみさん、ちわっす!
原書と翻訳本はやっぱり違いますね。
どちらかというと原書の方がより楽しめます。

>このお正月休みは読書三昧になりそうですネ(^_^)v
そおなるといいんですが、
Mixiに書いたような体たらくで(;^_^ A

ほんにゃんさん、こんちわ!
韓国がマイブームの上司ですか!?
翻訳ソフトを使うってことは
韓国の原書ないしは原ドラマを観てたってことですか?
それは驚きですね。

ではでは、よいお年を!

ピットママさん、こんにちは!

>今年はいろいろなことを教えて頂きました!
いえいえ、それは手前のせりふでございます。
ピットママさんのブログも貴重なブログです。

>唯一、お会いできなかったのが残念です
それは私も。

>来年も出張でお越しの際はお知らせくださいね
出張でなくても行ってしまうつもりですので、
そのときはよろしく!

ピットママさんも、ご家族でよいお年を!

EDIT COMMENT

非公開コメント

カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
全記事表示リンク
検索フォーム
コメント・TBについて

コメント・トラックバックをされる場合は注意事項をご覧ください。

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。