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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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中国に父のルーツを探る感動の旅~『あの戦争から遠く離れて』


城戸 久枝 / 情報センター出版局(2007/08/21)
Amazonランキング:677位
Amazonおすすめ度:


中国残留孤児が大きな話題となる前の1970年、独力で中国から日本に帰ってきた残留孤児がいました。その人の名は城戸幹、著者のお父さんです。

日本で生まれ日本人として育った著者(まだ31歳。若い!)は、子供の頃父の過去に関心を持つどころか、むしろ中国のつながりを恥じてそのことから目をそらし耳をふさいでしました。ところが、大学生になってからあることをきっかけに父のルーツに強い関心を持つようになり、ついには中国に留学して父のルーツをたどるようになります。そうしてコツコツと調べた結果をまとめたのがこのノンフィクションです。

この本は二部構成になっていて、前半は著者の父が終戦時に満州に取り残されて中国残留孤児となり、苦闘の末日本の両親の元に帰ってくるまで。後半は著者が父のルーツを探す旅を描いています。どちらも胸迫るものがありますが、特に第一部は胸のつぶれる思いや感動を何度も味わいました。

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終戦に際して関東軍に「棄民」され、逃げ惑い、周りでどんどん人が死んで行く中家族と離れ離れになり、危ういところを命拾いして中国人の養父母にひきとられるまでの経緯。人々の冷たさに胸ふさぎ、温かさに胸打たれます。

著者の父・幹は、日本人と知った子どもたちのいじめや大人たちの差別に会いながらも、養母の自分の子どもと変わらぬ慈愛や周囲の人々の温かい愛情に包まれてすくすくと育っていきます。

そして、幹に運命の時が訪れます。大学進学を目前にある強烈な「事件」が起き、そのことで自分が「日本人」であることを強く意識させられた幹は日本への思いを募らせるようになります。それから日本への帰国を果たすまでの幹の苦闘は胸に迫るものがあるとともに、日本の家族が見つかるまでの過程はとてもスリリングです。その一方で、中国では文化大革命が始まり、幹は否が応にもその渦中に巻き込まれていきます。そして、日本への帰国、愛する養母や家族との別れ。・・・もうドラマがてんこ盛りで息つくひまもありません。

父親のルーツを探して満州の田舎へと足を伸ばす第二部も感動てんこ盛り。初めて会う著者を昔からの知り合いのように温かくもてなす父の「家族」や友人たち。父の実家や小学校の跡など父の思い出の場所・・・。父の数奇な運命や異国でのルーツ探しということが背景にあるだけに、ただでさえ感動的な感傷旅行がいっそう感動的になっています。

一方で、今の日中関係を背景に、両者の間にはどうしても分かりあえない思いがあるのを著者は痛感します。著者はこの本の最後でその気持ちを次のように吐露します。

「私は、中国と日本の政治的な話題を中国人と話すことには相変わらず抵抗があった。長い時間をかけて中国と付き合っても、それだけは変わらなかった。でも、なぜだか、これでいいと思った。自分の感情をごまかすところからは何も生まれはしないだろう。(中略) 私と彼らの間には、わかりあえることもあれば、わかりあえないこともある。彼らが私を変えることはできないし、私が彼らを変えることもできない。(中略) それでも、彼らと私の関係は続いていく」

この、必ずしも中国にのめりこまない冷静でかつ正直な態度がこの本をいっそう感動的にしているのだと思います。

この作品で少し残念なのは、第一部が私から見ると少しあっさりしているところ。ないものねだりかも知れませんが、父親の子ども時代の苦闘や、文化大革命に巻き込まれた頃の様子がもう少し書き込まれているともっとよかったのになあと思います(※)。
 ※ このあたり、著者の父親は「うそが多い」と批判していますが、山崎豊子が中国
   残留孤児を描いた『大地の子』(文春文庫)の方が、さすがベストセラー作家の
   筆になるだけに読ませます。また、文化大革命に巻き込まれた家族を描くノンフィ
   クションとしては、著者が読んで中国に興味を持つきっかけとなった『ワイルド・ス
   ワン』(ユン・チアン、講談社文庫)
が超おススメです。

【じっちゃんの誤読的評価:★★★】

 蛇の足
第二部の中では父親のルーツ探しとともに、中国人残留孤児たちの日本での苦闘も描かれます。今薬害問題で問題になっているような「線引き」をここでも平然とする官僚や裁判所、問題から目をそらし決断しない政治家たち(※)。その温かみの感じられない対応には心底腹が立ちます。
  ※ 血の通った対応をした数少ない政治家が前総理の安倍さん。2007年1月東京
    地裁で中国残留孤児国家賠償訴訟で原告(中国残留孤児)敗訴の判決が
    出た後、すかさず新しい支援策の検討を指示。それを受けて支援のための法制
    化が進められ、これにより来年にも原告全員の訴訟取り下げが予想されている。

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COMMENT

『ワイルド・スワン』は随分前に読みました。

>「私は、中国と日本の政治的な話題を中国人と話すことには・・・・・・・・・・それでも、彼らと私の関係は続いていく」
ここの文章を読んだだけで、鼻の先がツンとなり涙が滲みました。
>なぜだか、これでいいと思った。
この言葉に全てがつまっているように感じました。

いま 本を読んだかのように感動しています。
じっちゃんの本の紹介に五つ星!

ケイさん、おはようございます!

『ワイルド・スワン』お読みでしたか。
私は単行本が発売されてすぐに読みましたが、
とても面白く感動的で、評価をつけるなら5つ星です。
ケイさんのご感想は?

>ここの文章を読んだだけで、鼻の先がツンとなり涙が滲みました。
著者のここの言葉いいでしょ。
この方まだお若いのに(31歳)、
すごく洗練されたセンスのいい文章をかかれます。

>じっちゃんの本の紹介に五つ星!
ありがとうございます(涙

ふうむ、なかなかに面白そうですね。
先の戦争を知る上でも中国を知る上でも興味深そうです。
大地の子やワイルド・スワンも面白そうですし。
残留孤児に関する知識はあまりないので
いつかは勉強のために読んでみたいと思いました。

シンさん、こんにちは!
この3作はどれもおススメですよ。
中でも『ワイルド・スワン』は超おススメです。

『ワイルド・スワン』は、はっきり思い出せません。
・・・って書いているうちに少しずつ思い出してきました。
中盤に印象深い言葉があって・・赤いラインを引いたような。。。
読み終わったあと考え込んでしまったような・・・?
作家は女性でしたよね。
身近なひとから中国の話を聞いたようなそんな気がしたと思います。
本が出た当初はテレビにもよく出演なさっていたと。。。
中国では出版禁止だったのでは・・・?
誰かと話したら「そうそう」と思い出すのですが。^^;

思い出そうと努力することは認知症の予防になるそうです。(^^ゞ

パールバックの『大地』は忘れません。
農作業しながら出産するシーンは女性として強烈でした!
出産を恐れている若い女性がいると、いつもこの話をします。

「私と彼らの間には、わかりあえることもあれば、わかりあえないこともある。彼らが私を変えることはできないし、私が彼らを変えることもできない。(中略) それでも、彼らと私の関係は続いていく」・・・
私もこここまで読んで来て胸が詰まりました。
我が子たちがハーフとしてのアイデンティティを見つけている過程に似てたからかも知れません。
to accept who they are, how they are....つまり違いを認め受け入れるって肝心なんじゃないかと思うんです。 変えようとするから葛藤が始まる。 勿論闘っても変えなくてはならない事情だって確かにあるんですが。

じっちゃんの本の感想から少し外れてしまって御免なさい。

今年もお付き合い下さって有難うございました。

良いお年をお迎え下さい。

私も『ワイルド・スワン』の細かい話は忘れました。
著者は中国人の女性で、著者の両親をはじめ
周囲の人が文化大革命の中で粛清されたり、
悲惨な目に会うお話です。

とっても美人な方でケイさんもおっしゃるように
出版当時テレビにもたくさん出演されました。
もともとイギリスで出版されたもので
中国ではいまだに出版すらされていません。

パールバックの『大地』かあ。
いいこと聞いた。
これをきっかけに原書で読んでみようかな。

モナカさん、おはようございます。

モナカさんもモナカさんのご家族も
アイデンティティのことではお悩みになったでしょうね。
日本で日本人として生まれ育った我々には
想像もつかない悩みです。
この本の著者も、著者のお父様も、そして残留孤児の皆さんも
アイデンティティのことではとても深く悩まれており、それが胸を打ちます。

>じっちゃんの本の感想から少し外れてしまって御免なさい。
いえいえ、ど真ん中直球ですよ(笑

>今年もお付き合い下さって有難うございました。
私こそ有難うございました。
今Mixiに夢中でブログの訪問がおろそかになっています。
ご容赦ください。

モナカさんも、よいお年を!

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