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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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乱鴉の島


途中まで読んで「これは傑作になる!」とほとんど確信しました。

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☆以下ネタバレはしてませんが、作品のプロットについて若干触れています。ご注意ください☆

火村シリーズ初の孤島もので、シリーズ探偵の火村とワトソン役の有栖がちょっとした手違いから間違ってその島に来てしまったという設定です。いわば彼らは招かれざる客なわけです。

その島には数人の男女が集っていて、その中には高名な作家や医者も混じっているのですが、烏が多い不気味な島でとても保養地とは言えない島になぜ彼らは集まっているのか? その理由がわかりません。彼らが観光ではなく何か特別な目的をもって集まっているのは、二人の招かざる客を追い返そうとすることからも想像がつきます。しかし、その目的について参加者に聞いてもなぜか口を濁すばかり。この「なぜこの人々はこの島に集まっているか」が物語全体を覆う強烈な謎のひとつになっています。この謎が魅力的で、それが「傑作の予感」の一つ目の理由になります。

その島へホリエモンを髣髴とさせるベンチャー企業家ハッシーこと初芝社長がやはり招かざる客としてやってきます。そこから物語が動き始めます。初芝社長が島を訪ねて来た目的は驚くべきもので、それによって不思議な集会の目的も明らかになったかと思われたのですが...。

有栖川さんの作品では火村ものよりもうひとつの江神もの方が好きなのですが、その理由として江神ものの方が本格としての完成度が高いことに加え、火村ものが火村と有栖の掛け合い漫才みたいなやりとりを始めとしていささか騒々しいのに比べ、江神ものはより静謐な上品さが感じられることがあげられます。しかし、この作品では、舞台設定が暗鬱なこともあっていつもの火村ものの騒々しさは抑えられ、江神もののような静謐さ・上品さを湛えています。これが傑作の予感の理由二つ目にして最大の理由。

またホリエモンならぬハッシーが語る企業家としての夢がなかなか面白く、それについての火村と有栖の議論も興味深いものがありました。また、ホリエモン(のような人物)がこれから起きるであろう殺人事件に絡むとすれば、それは面白い展開になりそうです。これが傑作の予感三つ目の理由。

そして、殺人が起きます。殺人そのものの不可能興味はさほど大きくありませんが、なぜその人は殺されなくてはならなかったか、つまりは殺人の動機と、そしてそもそも犯人がなぜ殺人の事実を隠そうとしなかったかが読者を惹きつける謎となります。

孤島ものですので、ある事情で警察はその島に来れない設定になっており、そのためその殺人の謎は、謎の集会の目的とともに火村が解明していくことになります。

そして、待ってました! 登場人物全員を前にしての謎解きとなります。「傑作の予感」が現実になる瞬間です。期待はいやが上にも高まります。

犯人を特定する方法・ロジックは納得のいく鮮やかなものです。ますます期待が高まります。続いて犯行の動機が明らかにされていきます。

ここから、残念なことに、「傑作の予感」がもろくも崩れ去っていってしまいます。

魅力のひとつであったはずの殺人の動機が納得いかないのです。動機が弱いとはいいませんが、なぜこの時期に大きな犠牲を払ってまで殺人を犯さなければならなかったのか。それが全くわかりません。動機に関しては他にも疑問がありますが、これ以上言うとネタばれになるので控えておきます。

もうひとつのというか最大の謎であった集会の目的も明かにされますが、それがなんともはやという代物で。こういう理由付けが平気な人も少なくはないと思いますが、僕はダメです。目的そのものにも、それをめざす動機にも納得がいきませんでした。

もうひとつ、火村だけではなくいつものごとく有栖(=ワトソン)も集会の目的をあれこれと探るのですが、それがデリカシーのないちょっといかがなものかと思われるようなやり方で、それも気になりました。単なる憶測に過ぎないのにそれが事実であるかのように決め付けて参加者たちにぶつけ、それを否定する参加者を非難するのですから、やられる方はたまったものではありません。読んでいて不快になりました。

で、結局評価はこうなりました。

【じっちゃんの評価:★★】

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COMMENT

じっちゃんさん、こんばんは!
コメントいただきまして、ありがとうございます。

うぅ!じっちゃんさんの感想とほぼ一緒の事を、私も感じました。
犯人が、「え~と、誰だっけ」「そ、そんな動機?」という感じで、めちゃめちゃ存在感がなく、『黒根島の秘密』の方も、途中、アリスと火村の探りの入れ方に抵抗を感じつつも、最後で「おぉぉぉ!!」と思わせる謎があるはずだ!とすっごく期待したぶんだけ、ガックリしました。

やっぱり、このシリーズは短編で読みたいです。

実は、江神シリーズの方は大昔に「月光ゲーム」の冒頭(ゲームしてる所)でつまずいてしまって、未読なんです。
じっちゃんさんの感想を読んだら、再チャレンジしたくなって来ました!
新作も出たし、トライ・アゲイン!

花梨さん、おはようございます。

ご賛同いただいてありがとうございます(笑

>めちゃめちゃ存在感がなく
まったくそうですよね。
ネタバレになるので遠まわしにいいますけど、
江神シリーズにもそういうのがあって「アレ」と思いました。
でも、江神シリーズの方は腹が立たないんですよね、なぜか。

江神シリーズ、いいですよ。
まずは、毎回の主要登場人物である英都大学推理小説研究会と仲良しになることですね。
彼らのノリに付き合えるようになれば、
江神シリーズはとっても居心地のいいシリーズになりますよ。
最初はガマンして付き合ってあげてください。

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