プロフィール

じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
管理者ページ

カテゴリ

openclose

お気に入りブログ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

日本語から日本人を考える~『日本語の本質』



 司馬遼太郎が行った対談の中から日本語がテーマになっているものを集めたもの。対談の相手とテーマは以下のとおり。

 大岡信(中世歌謡の世界)、丸谷才一(日本文化史の謎)、赤尾兜子(空海・芭蕉・子規を語る)、大野晋(日本語その起源の秘密を追う)、徳川宗賢(日本の母語は各地の方言)、桑原武夫(人工日本語の功罪)

 いずれ劣らぬ碩学ばかりであり、テーマもバラエティに富んでいるが、日本語を通して日本人および日本文化を考えるという点が共通している。そして、複数の対談に通底して流れているひとつの考えがある。

 それは室町時代に日本語および日本文化が大きく変革したということである。司馬はそれを次のように表現する(正確な引用ではない。以下同じ)。

「室町時代に和歌(虚構)の時代が終わり、散文(リアリズム)の時代が始まった」

 そして、今現在われわれが使っている言語の源流は室町時代にあり、それ以前の時代とは断絶があると言う。これは初めて聞く議論であり、非常に興味深かった。

 言語だけでなく日本文化の形成という点についても室町時代は非常に重要な意味を持つ。司馬の言葉を借りよう。

「一芸(=茶の湯や俳諧や武芸)を持つ者が非常に価値が高くなったというのは、日本文化の幸いですね。この室町時代がなかったら、ぼくらは何でもない文化をもった民族ですよ」

 後半はちょっと言い過ぎなような気もするが、それほど室町時代が画期となったということなのだろう。

 これに関連して司馬は「平安時代はまるで別の国のようでよく分からない」と言う。その理由は、「われわれが知っている平安時代はうわずみ(=宮廷生活)に過ぎず、その時代における絶対多数の日本人の人情が分からない」からだそうだ。なるほどそう言われてみればそうだ。

 さらに司馬は「平安時代は嫌いだ」とまで言い切る。なるほど、司馬が平安時代を含めて古い日本を題材にしない(※1)理由はここにあったのか。

※1 唯一の例外が『空海の風景』。

 その後日本語は明治期に第二の変革期を迎える。いま使われている「文章日本語」(標準語と言ってもいい)が形成されはじめるのである。しかし、明治期はめいめいが我流で書き言葉を使っており、実際に「文章日本語」が成立したのは昭和30年代だと言う。しかも「成立」であって「完成」ではなく、(対談が行われた1970年の時点で)まだ発展途上だと言う。

 これについて、司馬と対談した桑原武夫が面白い見解を示している。これからコンピュータが普及する中で日本語の論理性が高まり、完成度もあがっていくのではないかと。対談から40年以上がたち、コンピュータが普及したいま、日本語は完成に近づいたのだろうか。

 それ以外にも、源氏物語を京都弁で訳せるかとか、国家元首が詩集を編んだのは日本くらいだとか、なぜ日本語には主語がいらないのかとか、日本語とアボリジニの言葉は濃厚な血縁関係にあるとか、目から鱗の話が満載。
【じっちゃんの誤読的評価:★★★★】
スポンサーサイト

COMMENT

No title

s
司馬史観、面白いですね、平安が嫌いというのが。
確かに、源氏物語、貴族の生活ですね。
庶民は、たぶん貧しい生活だったのでしょうね。
そして武士が台頭してきますね。

室町時代と言えば、足利義満の金閣寺を思い浮かべます。
あまりにきらびやかで、こんな物を作る人は、人間として好きにはなれない(笑)

日本語、言葉は変化していきますが、コンピューターの出現は言語にどのような影響を与えるのでしょう?
方言などにも影響を与えますか?
そして「完成」とは?

No title

アイマイさん

司馬遼太郎が平安時代が嫌いだというのは
正直ちょっと意外でした。

僕はわりと平安時代は好きです!(^^)!
『源氏物語』はなんど挑戦しても
跳ね飛ばされてしまいますが(^^;
紫式部や清少納言、藤原摂関家や安倍清明を
主人公にしたものをはじめ、
平安時代を描いた小説は結構読んでいます。

足利義満も嫌いではなく、
(というか、むしろ好きで)
平岩弓枝さんの『獅子の座 足利義満伝』
なんてのも読んでます。
義満は文化芸術を大事にした人で、
ですから、室町時代に今も残る日本文化が
花開いたのでしょう。
その他日明貿易も試みるなど、
結構気宇壮大な人です。

コンピュータはこちらの意図を
論理的に伝えないと動かないので、
コンピュータの普及とともに
日本語も論理的になるだろうと、
桑原武夫さんはおっしゃってます。
それが当たっているかどうかは
私ごときにはわかりません(#^.^#)

日本語の「完成」についてこの本は
明確には定義していません。
書かれていることから推測してみると、
「自分が見たり聞いたり考えたりしたことを
過不足なく表現できること」が「完成」だと
思われます。
その点今の日本語は物足りないと
おっしゃっているのですが、
どういうふうに物足りないのかは、
これも私ごときには分かりません(^_^;)

まあでも、英米文学を翻訳していて、
原語が表現していることをそのまま
ぴたりと表せる単語や表現が
日本語にはなく(思いつかず?)
もどかしい思いをすることは
しょっちゅうあります。
しかし、それは日本語の
「完成」度云々の問題というよりも
英語と日本語の違いだと思います。
日本語の文章を英語にするときも
同じようなことが起きますので。

以上答えになっていない答えでした(-ω-)

No title


こういう話は面白いので、又やって参りました^^;
お邪魔であれば、スルー願います。

足利義満は、平安貴族を真似たような気もします。
金閣寺には鳳凰がありますから
唐の文化に憧れたのでしょうね。

「なんとなく」を英訳すると、どうなりますか?
somehowが出てきたのですが、これ×ですよね?
「うそも方便」とか、他にも日本人の気持ちを表す言葉がたくさんありますが、英訳するのは難しいですね。

そして、「なぜ日本語には主語がいらないのかとか、」
これは、河合隼雄さんが
「日本語の会話において、主語や目的語がしばしば省略されるのは、主体と客体を明確に区別することを好まない日本人の心のあり方を示す」と書いておられたのを思い出しました。
日本人の自我が他に開かれており、他と切り離して存在することが難しいからだそうです。

そう考えると、日本語が完全に論理的になるのは、難しいような気がします。

No title

義満が平安貴族をまねようとしたというのは
そのとおりだと思います。
彼は、貴族を超えて天皇になる野望を持った
男ですからね。

「何となく」はsomehowでいいと思いますが、
それ以外にも候補は複数あります。
文脈なしの単語だけでは、
そのどれかに絞ることはできません。

日本語に主語がないことについて、
この対談集では、
「日本では文化と環境を同じくする人を
相手にしているから、
主語を言わなくとも伝わる」
というようなことを言っています。
(その極端な例として源氏物語が
あげられています)


No title

足利義満がお好きなら、この写真は如何?
古いブログですが、キンキラです。

http://blog.livedoor.jp/tosiko2/archives/51705645.html

No title

アイマイさん

記事、興味深く拝見しました。

Wikipediaを見ると、義満はやはり
あまり評判がよろしくないようですね(^^;

義満にかぎらず、日本の歴史では
一般的にあまり評判のよくない人がたくさんいます。
足利尊氏、道鏡、徳川綱吉、田沼意次、吉良上野介……。

評判が悪いのには悪いなりの理由があるわけですが、
ひねくれた性格の私は「本当にそーなのかなあ」と
思ってしまったりします(´ー`)

まあ、人間て一方的に悪い、一方的によい
という人はめったにいないわけで、
悪いところもあればよいところもある。
義満もそんな人間だったと愚考します。
で、私は「義満のよいところ>悪いところ」
との印象があって「むしろ好き」となった次第です。

No title



歴史上の人物の好悪は、後の人間の評価ですから
あまりアテにならないと思います。

個人的な感覚でよろしいのでは?

No title

アイマイさん

おっしゃるとおりですね。

No title


文字が消えていたので、ちょっと編集しました(^^;

またいつか、じっちゃんさんと
日本人の思考パターンについてお話が伺えればと
思いますm(_ _)m

No title

アイマイさん

すいません。
余計なことを書いたかなと思って消してしまいました(^^;

EDIT COMMENT

非公開コメント

カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
全記事表示リンク
検索フォーム
コメント・TBについて

コメント・トラックバックをされる場合は注意事項をご覧ください。

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。