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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
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アベノミクスは現《うつつ》か幻か?~『世界が日本経済をうらやむ日』



 アベノミクスの成否については賛否両論が飛び交っている(今は「賛」の方が強いか?)。ぼくもアベノミクスがうまくいくかどうかについては半信半疑、いや六信四疑くらいだった。それを確信に変えるにせよ、疑問を持つにせよ、アベノミクスの勉強が必要だと思っていた。

 そう思っている矢先にこの本が出た。著者は、いわゆるリフレ派(※)のひとりとしてアベノミクスを理論面から支える浜田宏一イェール大学名誉教授であり、日本人初のノーベル経済学賞受賞もうわさされる経済学者である。その浜田先生がアベノミクスに太鼓判を捺してくれれば、こちらも心強い。もう読むしかないと思った。

※ 緩やかなインフレへと誘導することによって経済を安定成長に導くことができるとする経済学の一派。緩やかなインフレへと誘導するための施策として(量的)金融緩和を重視する。

 ところでアベノミクスは、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民主投資を喚起する成長戦略」という3本の矢からなる。この本で論じられるのは、著者が著者だけに、主として第1の矢の金融緩和策である。

 アベノミクスの金融緩和策に対する批判として真っ先に言われるのは「金融緩和によって銀行に豊富な資金ができたのに、銀行の貸し出しは増えていないじゃないか」というものである。銀行貸出量の推移を見てみると確かに増えておらず、そのデータを背景に「そうでしょ?」と言われると、ぼくなどグゥの音も出ない。ところが浜田先生は言う。「景気回復には銀行貸し出しの増加は必須ではないのである」と。「えっ、ならば何のための金融緩和だったの?」と思うではないか。

 これに対して浜田先生は、これまでのデフレの中で企業は将来を心配して資金を溜めこんでいた(いわゆる「内部留保」である)。金融緩和策によるインフレ期待により、企業はその内部留保を取り崩して投資に回しはじめている。それにより景気が回復し企業が資金不足になるときが銀行預金の出番だと言う。「(まずは)世の中にインフレ期待を持たせることが重要であり、そのための金融緩和だった」。そう言われて周囲を見回してみると実際そうなっている。なるほど。

 加えて、大胆な金融緩和によって円安が誘導され、それによって企業(特に輸出製造業や、海外との競合産業=漁業、農業、観光業など)がうるおいはじめていると言う。

 アベノミクスに対する批判として次に言われる(というか最も言われる)のは「給料が増えてないじゃないか」というものである。それは確かにそうだと浜田先生は言う。しかし、それはすでに職を手にしていた人の給料についてである。ところがその一方で、アベノミクス発動後失業者が減少しており(つまり給料をもらえる人が増えており)、労働者がもらう報酬の総計は右肩上がりで増え続けていて、その結果弱者が救われているの。マスコミやアベノミクス反対論者が取り上げているのは前者であり、本来は後者を云々すべきだと言う。

 つまり現在企業は生産能力を増やしており(ないしは増やそうとしており)、その手段として新規採用を増やしているのである。生産量を増やそうとする場合、従業員の給料を上げるよりも新規採用を増やす方が投資効率がいいからだ。

 こう論じたうえで、失業率が低下して完全雇用に近くなったら(すなわち、新規採用を生産量増大の手段として使えなくなったら)、給料が増え始めると言う。過去のデータもそれを示しており、完全失業率3.8%がその分岐点となる。その3.8%を下回ったのが2013年12月。そこで給料増加に転じるはずだったのだが、消費税増税がそのチャンスを摘んでしまった(※)。2段目の消費税増税を見送り、完全失業率も3.6%まで低下した現在、本格的な給与の増加が期待できるそうだ(実際今度の春闘でそうなりそうだ)。

※ 私は経済ニュースに敏感なのでよく知っているが、浜田先生は2014年4月の消費税増税を安倍内閣が決める前から、一貫してそれに反対していた。そのとき多かった「予定どおり消費税を増税すべき」という議論に対する浜田先生の反論も非常に興味深いが、すでに文章の量がかなりのものになってしまったので、泣く泣く割愛する。

 著者はアベノミクスを支えるブレーンのひとりであり、多少話を割り引いて聞く必要はあるかもしれない。金融緩和は景気には効かないという論者もまだ多数いるし、ぼくにも「信じたい」というバイアスがかかっている可能性もある。それでも浜田先生の主張は説得力があり、アベノミクスに対するぼくの信頼は六信四疑から七信三疑くらいにはなった。

 なお、ぼくの誤解かもしれないが、金融緩和が効く理由は経済的な力学が働くというよりも、人びとの気持ちの問題(インフレ期待)であり、だとすると、反リフレ派が言うように金融緩和がいずれ経済政策として有効でなくなる日が来るかもしれない。
【じっちゃんの誤読的評価:★★★☆】
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COMMENT

No title

いえいえ、非常に興味深いお話でした。
私はアベノミクスに半信半疑… どちらかと言えば、マユツバでしたよ。中小企業とか、私には何の恩恵もないアベノミクスでしたが、社会全体にとっては、良かったのかも知れませんね。それに工務店は儲かっていたようです。

じっちゃんがこうして本を読んで教えて下さいますからねv-392

それに、私の好きなマツコ・デラックスも、最近はタクシーの乗車率が増えていると言ってましたよ。
(テレビは見ないので、ネット情報ですが)

人は雰囲気に弱いのかも知れません。実態は別として、不景気だと言われれば不安感から雇用しなくなるし給料も上げなくなるし、景気が良いと言われれば、気分は上向きになるし。

>金融緩和がいずれ経済政策として有効でなくなる日が来るかもしれない。

良いときばかりは続きませんよね。アベノミクスの次には、何か別の○○○ミクスを作って、市場調整しなければ。

No title

アイマイさん

経済的な政策というのは、何でもそうですが、中小企業にまで恩恵が及ぶには時間がかかるものです。ことに、アベノミクスの場合、円安によって大きな効果がある一方、原材料費高騰という副作用もありましたからね。でも大企業の景気がよくなれば、自ずから中小企業にも恩恵があるはずです。今年は(何か足を引っ張る事件がなければ)そうなると私は思っています。

景気は気分に左右されるところが大きいと思います。病と同じように「景気は気から」です。もっとも病や景気に限らず、何ごとも「気」が果たす役割が大きいというのが私の考えです。

アベノミクスがうまくいけば、その効果はかなり続くと私は思っています。ただし、ロシア、中国、中近東、ヨーロッパとリスク要因もたくさんありますからね。そこらへんで、何か悪いことが起きないといいのですが。

景気が良くなって欲しいです

経済の仕組みは難しいです
じっちゃんが書いているように良い側面もあるし悪い側面もあるので
一直線に進んでいると、必ず歪みがでるのかなと思います

大企業の景気が良くなれば中小企業にも恩恵がでるというのも賛成です
中小企業さんも日本独自の伝統を生かして若い人を巻き込んで
新しいものを作っていくと良いなと単純に思います

またネットを使った起業も、多種多様な新しい仕事が出来ています
体を使って、頭を使って日本が他国や他の要素に振り回されない国に
なってくれたらなと思います

腕の方は無理しないでくださいね
少しずつゆっくり動かすのも筋肉を鍛えると
いつかのテレビで言ってました (*^ . ^*)エヘッ

それと英語のパッケージの文章についてピットママの
BBSに書かせてもらいましたので、お時間のあるときに読んでくださいね

No title

ピットママさん

私は、何でもかんでも経済最優先でいいのかなあという思いがいつも抜けません。でも考えてみれば、経済という言葉ももとは「経世済民」(世を経(おさ)め、民を済(すく)う」です。"その本意に返るなら"それでいいのかもしれません。

腕のご心配、ありがとうございます。アドバイスいただいたとおり、これからはぼちぼち直していきます。

BBS拝読しました。私のふとした疑問からお手数をおかけしました。ありがとうございました。

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