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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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生首に聞いてみろ


本格ミステリファンとしてはずっと気になっていた作品です。何しろ2005年度本格ミステリ大賞受賞作品ですから。

新本格御三家(※)のうち法月綸太郎さんだけはちょびっと肌が合わなくて、これまで「頼子のために」と「雪密室」しか読んでないんですよね。この二作も水準以上のできではあるんですが、傑作と評するまでにはいたっていません。
 ※綾辻行人、有栖川有栖、そして法月綸太郎

肌が合わない理由は自分にもよくわかりませんが、法月さんがハードボイルドにも傾倒していて、本格とハードボイルドの融合的なことを試みていること、それが中途半端に感じられることが理由として挙げられるかもしれません。

でも、この本はずっと気にはなっていたので、北海道出張で読む本がなくなった際に(※)購入し、読み始めました。
 ※7/22の記事「地下鉄(メトロ)に乗って」参照。

で...。

さすが本格ミステリ大賞を受賞しただけあって、本格としての結構はかっちりとしていて隙がありません。終盤における謎解きではパズルがピタッピタッと収まるところに収まっていき爽快感があるとともに、意外な伏線に「あっ、あれが伏線だったのか」と驚かされる快感があります。

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特に感心したのは、殺人の前における事件。その取扱いといい、真相といい、極めて独創的なアイデアだと思います。

それ以外にも切れ味のいいトリックが満載で、一例をあげれば言葉の綾を使ったトリック。この種のトリックでは横溝正史の『獄門島』における「キチガイじゃがしかたがない」が有名ですが、それに匹敵するとまでは言わないまでも、かなりいい線いっていて感心させられました。

と、こう書いてくると、「おっ、ついに法月さんの傑作と出会えたんですね」と思われそうですが、うーん、残念。そこまではいきませんでした。いい面と同じくらい欠点も目について。

まず、メインのトリックのひとつに無理があります。とても成立するとは思えませんし、百歩譲ってそれには目をつぶったとしても、そもそもそこまでやる人間がいるとは思えません。その他にも(私の)常識では理解不能な登場人物の行動がいくつか目につきます。

文章が硬くて読みづらいのも難点です。事件の派手さとはうらはらに抑え気味の、静謐さをたたえたいい文章ではあるのですが、なんかこうきっちりとし過ぎていて息が詰まってくるんですよね。

また、私のような頭の悪い読者は、本を読み進めるうちにそれまでに起きたできごとの前後関係や登場人物のアリバイなどが頭の中でごちゃごちゃになってきてしまいます。本格ミステリでは、よく途中で探偵役ないしはワトソン役がそういったものを表にして整理してくれたりするんですが、この作品は、リアリズムを追求する作者のこだわりからでしょうか、そういうサービスはしてくれません。したがって、頭が混乱したまま探偵役の解説を聞くことになるので、謎解きがすっと頭に入ってきません。これで随分損していると思います。

探偵役の行動や論理の展開も中盤までもたついていて、とても名探偵とは思えないくらいです。これもリアリズム追求のゆえでしょうか。

最後の謎解きのしかた(構成)もちょっと疑問です。そのために、せっかくの意外性が損なわれているように思います。

と、欠点を並べ立てましたが、さすが本格ミステリ大賞だけあって、そんじょそこらの安ピカミステリとは違い、作者の志が感じられる端正な作品に仕上がっています。傑作とまでは言えないまでも、水準をはるかに超える佳作と言えるでしょう。

【じっちゃんの評価:★★★】

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COMMENT

こんばんは。
たしかにけっこう似た感じのレビューになってますね。
伏線の回収は見事だしミステリとしては良作。
でも傑作かと問われると微妙と。
それにしてもさすがじっちゃんさんの分析は見事ですね。
私もこれくらい書ければと思ってしまいます。
特にラストの謎解きの仕方(構成)も同じ感じでした。
でもって言われてみればワトソンタイプがいればと思いました。
探偵役のもたつき感は個人的にはリアリティがあっていいと思いましたが。

シンさん、おはようございます。

>たしかにけっこう似た感じのレビューになってますね。
でしょ?

>探偵役のもたつき感は個人的にはリアリティがあっていいと思いましたが。
そういう考えもあるでしょうね。
私は本格ミステリというと名探偵を求めてしまいますが、
法月さんはリアリティも追求してますからね。

>でしょ?
ですね^^

>名探偵を求めてしまう
私は作品によってこれはまちまちですね。
名探偵を求めてしまう場合もありますし、
泥臭い探偵を求める場合もあるといった感じで。
この作品に関しては犯人が天才肌でスマートな悪魔的トリックを使うタイプではなかったので、
これでよかったのはと思ってました。
この辺はやはり個人の好みと感性といったところでしょうか。

シンさん、こんばんわ。

>この作品に関しては犯人が天才肌でスマートな悪魔的トリックを使うタイプではなかったので、
確かにそうですね。

この作品の場合、名探偵云々よりも
リアリティの追求なのか
本格ミステリの妙味追求なのか
どっちかにせいというのが私の言いたいことですね。

はじめまして。
この作品がなんで大賞とったか分かりません。
保険金かかっててなんで警察が見逃す?
孕まされてバレてなんでそんな曖昧な言い方する?
被害者平和ボケしすぎやし。
途中の理屈っぽいのは好きなだけに、真相があまりにもお粗末な作品と思います?

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