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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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生きる


藤沢周平さんの衣鉢を継ぐと言われる乙川優三郎さんの直木賞受賞作品集です。

「生きる」「安穏河原」「早梅記」の3つの中篇が収められています。3つともすばらしい作品ですが、何といっても一番印象に残ったのは表題作の「生きる」です。

五十路を迎え、これまで順風満帆な生活を送ってきた又右衛門の生活は藩主の死を契機に暗転します。

一方ならずお世話になった藩主のあとを追って追腹を切るつもりだった又右衛門ですが、さまざまな事情もあって「お家のため」とその気持ちを抑え込み、「生きる」ことを選びます。

その後の又右衛門を待つものは容易にご想像がつくと思います。

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世間は追腹を切った者を賞賛し、生き残ったものを貶めます。しきたりに則った死の選択の方が生を選ぶことより安直かも知れないということ、「生きる」ことの方が「死ぬ」ことよりもつらいかもしれないということには思いを馳せません。

もちろんそんなことは覚悟していたはずの又右衛門ですが、現実にそういう仕打ちに会ってみると、そのつらさ、苛烈さにくじけそうになります。「強かった」はずの主人公が見せるそんな「弱さ」が胸を打ちます。

しかし、やがてあることを契機に又右衛門は自分を苦しめているものの本質に気づきます。「こんなことでわしは苦しんできたのか」と。

その瞬間目の前がぱぱあっと明るくなるのを私は又右衛門とともに感じました。本を読んでこんなに深い感動を覚えたのは久々のことです。

そして、ラストです。ここでも私は又右衛門とともに涙で眼が霞むのを覚えました。

「生きる」が頭ひとつ抜き出てはいますが、他の2作品、「生きる」の又右衛門同様主人公の信念から悲惨な境遇に落ちながら互いへの情愛を忘れない親娘を描いた「安穏河原」、身分違いの恋を描いた「早梅記」もいい作品でした。両作品とも副主人公の女性がとてもかっこいいです。

乙川さんの作品でこれまで読んだのは『霧の橋』だけで、その時はそれほどまでに感心しなかったのですが、『生きる』を読んでいっぺんで乙川さんのファンになりました。

よーし、これから乙川さんの作品をばりばり読むぞー。

【じっちゃんの評価:★★★★☆】

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