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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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ミステリ三冠王を読む~『満願』



 人から薦められて米澤穂信の『満願』を読んだ。昨年三大ミステリベスト10(このミス、文春、ハヤカワ)でいずれもトップに輝くという史上初の偉業を成し遂げたミステリだ。

 6篇の短編からなる短編集である。連作ではなくそれぞれが独立しており、登場人物もまったく異なる。また、事件があって、その謎を名探偵役が解くという本格推理でもない。ただ、ひとつ共通点があって、それは、さまざまな出来事の背景にある意表を突く真相(特に人間心理)をあぶり出すというものだ。その意外性が本書の読ませどころ。

 どれもが面白かったが、ぼくが最も気にいったのは「関守」。天城の山奥にある道で短い間に4件の死亡事故が起きる。それを幽霊譚(都市伝説)に仕立て上げようとして現場に赴いたライターが驚くべき真相にたどり着く。その後に待っているライターの運命を含め、優れたホラーストーリーとなっている。

「万灯」もよかった。バングラデシュで天然ガス開発を目指す商社マンがある村に調査拠点を作ろうとして、村人に頑強に拒まれる。村人の拒否の理由も意外ならその後の展開も意外だ。商社マンは村人の合意を得るためある犯罪に手を染めるのだが、完全犯罪成就と思われた矢先、思いがけないことから窮地に追い込まれる。商社マンを待ち受けていた究極の選択には、他人事ながら背筋が寒くなる。

 冒頭の「夜警」もなかなかだ。ある事件の処理に当たっていた警官が犯人を射殺してしまう。気の弱い警官がプレッシャーに耐えかねて発砲してしまったかのように見えたが、ちょっとした事実がもとになって、同僚の警官が驚くべき真相へとたどり着く。その真相にもあっと驚かされるが、真相が明らかになった後最初から読み返してみると、随所に(あからさまな)伏線が張られていたことがわかり、作者の凄腕に呆然とさせられる。

「死人宿」も洒落ている。自殺者が多いと言われる山深い温泉宿の風呂に落ちていた一通の遺書。それを書いた可能性のある泊まり客は3名。その中から遺書を書いた人物を突き止めるという謎が斬新でまずいい。ただ、その謎を解く道筋が、鮮やかさもあるものの、ちょっとあっさりしすぎているかなという気もする。ついでに、最後のオチもなかずもがなに思われた。

「満願」は表題作でもあるし、それまでの各作品の出来がよかっただけに大いに期待して読んだ。しかし結果は残念なものだった。最後に明かされる謎は意外だしそこそこ面白いが、「そのためにそこまでやるか」という気持ちがぬぐえなかった。

「柘榴」は、ぼくとしては最も評価が低い。ぼくの嫌いなイヤミス系であり、読みたくないたぐいの小説だというのが最大の理由だが、それを置いとくしても、途中で真相に気づいてしまって意外性に乏しいし、あんなことでこんなことをしてしまう(そして周囲を不幸に陥れる)登場人物の心理にまったく共感できなかった。

 総合的に見て質の高い短編集であることは間違いないが、三冠王を取るほどの出来かというと、アマゾンの多数の読者同様首をかしげざるをえない・・・・・・というのがぼくの結論。
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