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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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認知症と向かい合うということ~『長いお別れ』



 定年退職後認知症となった夫(東昇平)を老々介護する妻と、その娘たちを描く連作短編集。

 私は家族の中に認知症の人を持っていないが、その立場からのみ言うと、認知症とその介護の実態がかなりの程度リアルに書かれているように思える。

 今言ったことやしたことを忘れる。現在の状況が把握できない。家族を家族と認識できなくなる。家族が本人のためにしようとしていることを頑強に拒む。徘徊する。そうした夫(父)に、困惑しながら対峙する妻(娘たち)。そうした光景が、ときには微笑ましく、ときには悲しく、ときには辛く、ときにはやりきれないエピソードとともに描かれる。

 そうした精神的な苦労だけでなく、肉体的・物理的な苦労も克明に、そして(おそらく)的確に描かれる。

 こうして書くと暗い話と思われるかもしれないが、意外にも物語の全体的なトーンは明るい。昇平の妻曜子や娘たちをはじめとして登場人物の昇平に対するまなざしがやさしく、それより何より作者のまなざしが温かいのだ。主要な登場人物に悪い人がいないのもよい。介護施設のスタッフも有能なのが頼もしい。

 認知症の人が身近にいる方の中には「こんなの現実的ではない」「オブラートに包んでいる」と感じる方もいるだろうし、ぼく自身も「現実はもっと厳しいんだろうなあ」とは思う。しかし、辛い話を辛く描くのでは伝わらないこともある。作者はそのあたりのバランスをうまく取っていると思う。

 いずれにせよ、本書を読んで、認知症とその介護が少しだけ身近になったことは確かだし、何より充実した読書体験を持つことができた。

【蛇足】
主人公(だよね?)の東昇平は何と静岡(県)出身で、しかもぼくの大学の先輩である。
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