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じっちゃん

Author:じっちゃん
翻訳家。
もとコンピュータ技術者。二足の草鞋で翻訳を始め、定年後フリーランサーに。
【趣味】
①読書:ミステリを中心に時代・歴史小説、歴史や科学などのノンフィクション
②四国遍路(2015年11月結願)
③街道歩き(現在敢行中)
④SNS(ブログ、Facebook、Line)
⑤観劇
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病院坂の首縊りの家

病院坂の首縊りの家 / 横溝 正史
☆☆今回から「じっちゃんの評価」は紹介文の最後に記載します☆☆

骨太の本格推理小説を読みたくなって、久しぶりに、ほんとに久しぶりに横溝作品を読んだ。

初期~全盛期の作品はかなり読んでいるので、あまり読んでいない晩年の作品から『病院坂の首縊りの家』を選んだ。2巻構成の大作である。

最後に読んだ横溝作品でこれも晩年の作品である『仮面舞踏会』にはあまりいい印象を持たず、大横溝も年には勝てないかとの感慨を持った記憶があるので、今回も期待と不安こもごもといった感じで読み始めた。

読み始めるとすぐに、金田一耕助の言葉づかいや立居振舞いに対する違和感という形で不安の方が的中する。居候先の旅館の女中に「何をこのあま!」と怒鳴りつけたり、「ときに本名はなんてえの」「なにがおっぱじまるというんだ」なんて言ったり、僕の記憶の中にある金田一と比較するとやけにはすっぱで下品なのである。金田一ってこんなだったろうか。

登場する若者の言葉づかいにも閉口した。いちいち例はあげないが、やけに幼稚で甘ったるく、時代(昭和28年が舞台)を考えても、いくら何でもという感じなのだ。

しかし幸いにも不安に少し遅れて期待の方も満たされる。

大病院の屋敷跡で行われる奇妙な結婚式、続いてその病院跡で起きる惨劇(天井から鮮血を滴らせて風鈴のようにぶら下がる生首!)。いかにも横溝ワールドであり、これでぐぐっと惹きつけられる。

フーダニットへの興味はもちろん、奇妙な結婚式の意味は?何で生首を風鈴のようにぶら下げたのか?胴体はなぜ消えなければいけなかったのか?と頭の中は"?"マークでいっぱいになる。後が読みたくなる。

その後も若干のもたつきが気になるものの、作者のストーリーテリングのうまさは相変わらずで、ぐいぐい読ませる。

<<この後ネタバレはしていませんが、プロットには若干触れていますのでご注意ください>>

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事件は未解決のまま上巻は終わり、下巻はいきなりその20年後(昭和48年)、金田一と等々力警部の面会の場面から始まる。この設定は鮮やかでその後の展開に期待が膨らむ。

下巻に入るともたつきは全く感じられなくなり、スピーディーに心地よく物語りが展開する。

ここでももちろん殺人事件が発生する。それも20年前の事件との関連が明瞭な事件だ。20年前の事件の関係者が犯人の可能性が高いが、だとするとその動機は何なのか?なぜ20年後なのか?20年前の事件とはどう関係するのか?いったいどんな方法で殺したのか?とまたまた"?"マークが頭の中で跳梁する。

さて、謎の面白さは十分として解決はどうか。

昭和48年の事件の主たる謎である「何のために?」「なぜ今?」は納得の行く形で合理的に解き明かされる。犯人も十分意外だ。その行動の不自然さが気になるが、そこに目をつむれば動機も納得できる。

では肝心の20年前の事件についてはどうか。僕にとって最も気になるのは、フーダニットやハウダニットもさることながら、ホワイダニット(なぜああでなければいけなかったのか)である。

解き明かされる事件の顛末は十分以上に意外であり、フーダニット、ハウダニットに対する答えも鮮やかと言っていい。しかし肝心のホワイダニットがちょっと弱い。特に生首を風鈴のようにぶら下げた理由が不自然だ。奇妙な結婚式の真相も(作者が描く犯人像も考えに入れると)、そこまでするかと思わざるを得ない。

それから、作品には驚天動地の大トリックが仕掛けられているが、すれっからしのミステリ読者なら途中で気づいてしまうだろう。それよりも何よりも、とても成立するとは思えないトリックである。これを成立させるには、成立させるだけの理由付け・説明が必要だが、作者の説明は残念ながら十分とはいえない。

というわけで、面白い作品ではあるものの傑作とは言いがたい。せめて第一の事件のホワイダニットがもう少し詰められていたら傑作と呼べたのにと残念でならない。

【じっちゃんの評価:★★】

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